ガソリン価格の高騰によって、クルマ関連の負担増がドライバーに重くのしかかっている。そのため燃費を良くしようといろいろと工夫したいところだ。
1円でも安いガソリンスタンドを探して給油するのはバブル期以降のドライバーの性(さが)のようなもので、ガソリン代を安くする基本中の基本である。
しかし、最近はガソリンスタンドの価格表示も割安な会員価格を大きく表示し、その系列の会員(といってもカード会員やアプリなど最近は複雑だ)ではないドライバーは、大きな価格表示を見て入店して実際の価格にガッカリすることもあるようだ。
その他にも燃費のためによかれと思ってすることに意味がないどころか、クルマにダメージを与えてしまったり、走行中に危険を及ぼす可能性があることだってあり得る。クルマやパーツの寿命を縮めてしまっては本末転倒、ガソリン代が少し抑えられても、修理代がかかったり、立ち往生して一日をフイにしてしまっては意味がない。
そこで、省燃費関連のよくやりがちな誤った対策を、危険なモノから紹介していきたい。
文/高根英幸
写真/ベストカーweb、Adobe Stock(トビラ写真icsnaps@Adobe Stock)
■逆効果1/下り坂をNレンジで走って燃費がよくなるのは大きな間違い
まず走行中の下り坂でATをNレンジにシフトするのは、絶対に避けてほしい。コースティング(駆動系の伝達を切って駆動抵抗を減らした滑走状態)をイメージして、燃費が向上する気がするものだ。
しかしDレンジのままでもトルクコンバーターのおかげでエンジンブレーキはほとんど利かないし、アクセルペダルを完全に戻していればエンジンがストールしない程度に燃料を噴射するだけで、燃料を節約してくれる。
Nレンジではアイドリングを続けることになるので、Dレンジでの下り坂走行よりも燃料を消費してしまう可能性があるのだ。
それだけでなくNレンジで走行するのは、クルマを壊してしまう可能性もある大変危険な行為だ。というのもATには変速やトルコンのためだけでなく内部を潤滑するためにもATFを圧送するオイルポンプが組み込まれている。
Nレンジにするとエンジンの駆動力が伝わらなくなってオイルポンプが止まってしまう。その状態で走行すると、潤滑不良や油圧不足によりAT内部にダメージを負ってしまう可能性があるのだ。
では何のためにNレンジが存在するのか、と思う人もいるだろう。Nレンジが存在する理由は大きく分けて2つある。
1つはエンジンブレーキを強めに利かせたり、峠道などでエンジン回転数をある程度以上にキープするために、Dレンジから3速や2速レンジへとシフトダウンして走行した際、Dレンジへとシフトアップ操作した時に誤ってRレンジにまでスライドさせないための余裕としての存在だ。
もし勢い余って大きく操作してもNレンジであればクルマの挙動や周囲の危険、クルマへのダメージを抑えられる。
ただし、機械式油圧制御のATであっても、ほとんどのAT車はドライバーのシフトミスを想定して、極低速域以外では前後進のシフト操作を受け付けない安全対策が施されているから、万一誤操作をしてもAT本体にダメージが及ぶことはないようになっている。
そしてもう一つの役割が牽引して移動する際に駆動系の抵抗を抑える、というもの。前述のコースティングの代わりにNレンジを使ってしまうと変速機にダメージが及ぶのと同様、本来はATには良くないものだ。
しかし牽引しなければクルマを移動できない時には、ギアが入っている状態(といっても油圧で断続しているので、エンジンが停止した状態では選んだギアの状態になっているとは限らない)より駆動抵抗がなく、まだ牽引しやすい状態にある。AT車を牽引する場合、Nレンジにして低速走行(25km/h以下の指定が多い)するよう指定されているのは、そういう理由からなのである。
MTの場合はニュートラルで走行することは可能ではあるが、コーナーや交差点を曲がる時に駆動力が加速減速のどちらかに掛かっている方が、車体は安定する。なのでかなり離れた前方の信号が赤で、そこまで空走状態で近付こうとするような場合にはニュートラルで進むのはいいが(筆者はタマに実践する)、通常走行や峠道の下り坂をニュートラルにして走行するのは止めた方がいい。
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