■今までのシステムから、どれほど進化したのか?
従来の音声認識機能はコマンド(命令)があらかじめ決定されており、ユーザーが規定どおりに発話する必要があった。これに対してMBUXの音声認識機能は、自然言語処理機能の採用により、ほとんどの命令に従って、インフォテインメントおよび車両の操作関連の文章を認識、理解できるという。
たとえば、遠まわしな表現にも対応可能で、たとえば空調機能を使って室内温度を下げる場合には「24℃」という明確に定義された命令ではなくても、「暑い」と言えば理解するとしている。
MBUXはダイムラーが人工知能開発の大手であるNVIDIAと音声認識機能を手がけるニュアンス・コミュニケーションズなどとの共同開発で生まれた。
特に後者はスマートフォンと車載端末を連動させて、米アップルの「カープレイ」や、米グーグルの「アンドロイドオート」などが使える機能を車両に与えるだけでなく、車載カーナビの開発で培った音声認識を基本として、クラウドと車載搭載機能を利用した「ハイブリッド方式」を各メーカーに提供しているという。
今回のメルセデスのように音声認識機能を外注に頼らず独自で開発するのはめずらしいケースとのことだが、そこには将来の自動運転技術を開発するうえでの展望が見え隠れする。
■「調子はどう?」と抽象的な質問にもちゃんと答えてくれる
ちなみに日本仕様のMBUXは完全に日本語対応になっており、流暢な英語で話しかけると認識しないという。呼びかけは「ハイ、メルセデス」でも「ヘイ、メルセデス」でも応じるという。
実際にAクラスが発表された際に、MBUXのデモンストレーションが行われていたので、どのようなやりとりだったのか、一例を紹介しよう。
男性が「ハイ、メルセデス」と声をかけると、MBUXがピコという音がして、「どうぞ、お話しください」と答える。男性が「ちょっと暑いんだけど」と話しかけると、MBUXが「21度にします」と答えた。
女性が「ハイ、メルセデス」と声をかけると、「何を行いますか?」とMBUXが答える。女性が「ジャスト・ライク・ユーをかけて」とリクエストすると、曲が流れた。
また男性がMBUXに「今日の調子はどう?」と話しかけると、MBUXは「悪くないです」と答えていたが、「まあまあです」、「最高です」と答える時もあるというからおもしろい。
MBUXが喋る日本語は、若干たどたどしさが残るものの、なかなかのものだった。時折、反応がいってんぽ遅れることがあったが、これはご愛敬か。
気になるのは、日本語の方言をちゃんと認識するのかということ。なんと、関西弁もきちんと認識するという。とはいっても、語尾を認識する程度で、さすがに「もうかりまっか?」と話しかけると「ぼちぼちでんな」とは返してくれない。
例えば前出の「ちょっと暑いんだけど」のちょっと馴れ馴れしい(?)標準語の場合では、「暑い」の単語に反応している。「めっちゃ暑いねんけど」「ごっつ暑いやん」といった関西弁の場合でも「暑い」の単語に反応して、温度を下げてくれる。
地域によって語尾が違う、方言でも対応はするとのことだが、完全に発する言葉が違う方言については認識しないのは当然といえば当然か。言葉が通じない場合は、「もう一度お話しください」と返される。
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