■1700mm以上のスライドドアのミニバンしか生き残れない!
以上の経緯から、現時点で生産を続けるミニバンは、ジェイドとプリウスαを除くと全高が1700mm以上で(オデッセイとシエンタは1700mmを少し下まわる)、なおかつスライドドアを備える。この2つの条件に当てはまらないミニバンは生産を終えた。
スライドドアを備えた背の低いミニバンは機能が乏しくて人気を下げたが、1990年代の中盤から2000年代の前半には、イプサムやストリームの初代モデルが注目された。この時代はミニバンが普及を開始した段階だから、初めてミニバンを買うユーザーも多い。背の低いワゴン風の車種が馴染みやすいと感じるユーザーもいて、相応に売れた。
しかしこの後にミニバンが売れ行きを伸ばし、2010年頃になると、もはや新鮮なカテゴリーではなくなる。いわゆる「ミニバンブーム」は終わり、購入するのは、多人数乗車や自転車の積載といった確固たるニーズのあるユーザーのみになった。
そうなると3列目シートが狭く、自転車なども積みにくい背の低いワゴン風のミニバンは、単純に実用性が低いと判断される。販売不振に陥り、生き残れたのはセレナ、ヴォクシー&ノア、ステップワゴンなど、背の高いスライドドアを備えた車種のみだ。
背の低い横開き式ドアのミニバンにも、運転感覚が自然で走行安定性が優れ、価格が割安といったメリットがあったが、背の高いスライドドアの付いたミニバンの魅力には勝てなかった。
現在、特に人気のミニバンはハイブリッド車が必須となっている。2018年1〜12月の販売台数ランキングではセレナがセレナが新車販売台数全体で総合4位の9万9865台、ミニバン1位に輝いている。2018年2月にセレナe-POWERが発売され、人気に拍車がかかった。
■3列シート7人乗りのSUVは、ミニバンの代わりになるか?
興味深いのは、背の低いワゴン風ミニバンが廃止された代わりに、SUVの3列シート仕様が登場して注目を集めていることだ。
これらの内、3列目シートが最も快適な国産SUVはマツダCX-8だが、全長は4900mmに達する。これだけ大柄なサイズでも、3列目の居住性は、コンパクトミニバンのホンダフリード、トヨタシエンタと同等だ。ホンダCR-Vは若干狭い。
そして大人6名が乗車して片道1時間程度の距離を不満なく走れるのも、CX-8とCR-Vだけだ。
日産エクストレイル、三菱アウトランダー、トヨタランドクルーザー&レクサスLX、ランドクルーザープラド、レクサスRX450hL、パジェロなども3列シート仕様を用意するが、これらの3列目は、すべて荷室に装着された補助席と思ったほうがいい広さだ。大人が座ると窮屈な姿勢を強いられる。
結論をいうと、現在の3列シート7人乗りSUVは、ミニバンの3列目シート車の代わりにはなっていないのが現状だ。
このようにSUVとミニバンで3列目の居住性が大きく異なる理由は、床面の造りと全高が違うからだ。スライドドアを備えた背の高いミニバンは、ボディ後部の燃料タンクをカバーできる位置まで車内前側の床を高持ち上げて、床面をフラットに仕上げた。そのために3列目のシートも、1/2列目に近い着座姿勢になる。
ところがSUVは、このような床面構造を採用していない。3列目の床は燃料タンクのために持ち上がり、座面との間隔が不足する。その結果、1/2列目とは異なり、膝が大きく持ち上がる窮屈な姿勢を強いられる。
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