かつて新車市場の王者だったミニバンの人気はなぜ凋落したのか!? SUVが代われない理由

■ミニバンを新たに作らない訳

 そうなると既存のミニバンをSUV風に変更したデリカD:5の類似モデルが登場してよさそうだが、なかなかそうならない。

 理由は2つある。まず最低地上高を持ち上げるには、相応の設計変更が生じることだ。最低地上高を高めると、下まわりを擦らずに悪路へ乗り入れられるから、ボディや足まわりも強化せねばならない。単純に車高を高めただけでは、悪路を走った時の耐久性が低く、クレームが生じかねない。エアロパーツを装着したグレードに比べると、開発に手間を要する。

 2つ目の理由は、ミニバンの需要が不透明なことだ。先に述べたようにミニバンは普及期を過ぎて安定期に入り、スライドドアを装着しない背の低い車種を廃止した。ミニバンは国内販売が中心の珍しいカテゴリーだから、国内の需要が下がると採算が取れなくなる。

 しかもミニバンの主な需要はファミリーで、少子高齢化が進んだ。子供を持つ世帯数の割合は、30年前の1989年は全世帯数の40%以上だったが、今は20%少々まで減った。ミニバンには大人だけで乗車するニーズもあるが、子供を持つ世帯が減ると需要の低下は避けられない。

■今後、ミニバンはさらに車種数を減らす可能性あり

 このような経緯もあり、ミニバンは車種数が減るだけでなく、フルモデルチェンジにも消極的になってきた。エスティマは発売から13年、前述のデリカD:5は12年、エルグランドは8年を経過する。

 ミニバンに比べるとSUVは、需要が世界的に旺盛で、海外向けも含めると車種数が増えた。3列目シートの付加価値も販売面で効果があるから、3列シート車の数がミニバンに近づいてきた。

 こうなるとミニバンは、今後さらに車種数を減らす可能性がある。いわば少数精鋭だ。少ない車種で対応すべく、従来以上に日本のユーザーニーズに合った綿密な開発が求められる。今後のミニバン開発では、各メーカーの「国内市場に向けた本気度」がわかるだろう。

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