■日産iDX (2013年)
標準仕様とレーシング仕様のニスモで内外装の仕立てを変えた2種類の仕様を設定するなど、演出の巧みさが際立っていたのが、2013年の東京モーターショーに出品された「iDX」だ。
iDXのDXは“デラックス”ではなく、iDの(Identityから)。ジェネレーションZという世代設定がジェネレーションXに続く“デジタルネイティブ”な若者を指すというのは多少なりとも理解できるが、資料を見ても、レトロ、クラシック、ノスタルジックという言葉を徹底的に排除してコンセプトを解説しているのは、スタイリングがもたらすイメージからすると明らかに意図的だ。
どこか510型ブルーバードやGC10型“箱スカ”スカイラインを想起させる箱形のスタイリングは、どうみても回帰的と思えるのは筆者だけではあるまい。
全長×全幅×全高は約4.1m×1.7m(ニスモ仕様:1.8m)×1.3mとコンパクトに仕上げられ、パワートレーンは標準型が1.2~1.5LガソリンエンジンとCVT、ニスモが1.6L直噴ガソリンとマニュアルモード付きCVTと説明するように、ここでもイメージ設定が先行していて、むしろコンセプトの骨太感が薄い感覚を与えてしまう。それでもどこか惹かれてしまうのは、オジサンの弱みを突かれているからだろうか。
■トヨタS-FR( 2015年)
2015年の東京モーターショーには、トヨタ自身が「ライトウェイトスポーツの系譜を継承」すると謳ったコンセプトカー「S-FR」が登場した。「Small-FR」と小型軽量FRを思わせるわかりやすいネーミングをもつコンパクトスポーツは、エントリーモデルとしてトヨタ社内の有志によって制作されたという。
軽量化に仕立てたとされるコンパクトな5ナンバーサイズのボディは全長3990×全幅1695×全高1320mm、ホイールベースは2480mm(新型スープラより10mm長い!)。
リアシートを備える2+2レイアウトを採用しつつも、ロング&ワイドのスタンスを採る。車重は1000kgとされていた。トヨタが現在進めているエッジの効いたデザイン・コンセプトとは対極的な曲線基調のスタイリングがオジサンにトヨタスポーツ800の再来と言わしめた一因だろう。
エンジンをフロントミッドシップに搭載、6速MTを装備など好ましいスペックが設定されながら、紆余曲折の末に、どうやら量産化は見送りになったようだ。
ヴィッツベースとしてスープラ/86の末弟が登場するかどうかも含め、まずはトヨタのコンパクトスポーツ開発の行く末を見守りたい。
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