■リレーアタックとはどのような手口なのか?
ここから本題に入るのだが、そもそもリレーアタックとはどのような仕組みの手口なのか。スマートキーはクルマのボディに向け、キーが微弱な電波(LF:長波)を発信し、クルマ側はRF(高周波)と呼ばれる電波をスマートキーに発信することでIDを照合する。
このシステムを採用することで、車内電波が車外に漏れ、車内のスマートキーが車外にあるとの誤認を防ぐようになっている。
この電波の及ぶ範囲はおおむね100〜130㎝前後であり、スマートキーとクルマが各々の電波を受信し、電子的な暗号が合うことでドアロックが解除される。こういったシステムの高度性ゆえに、スマートキーは盗難防止策としての有効性が評価されてきたワケだ。
リレーアタックでは窃盗団の犯行グループのひとりがクルマから離れたドライバーに近づき、特殊な中継装置でドライバーが持つスマートキーの電波を受信。その装置によって増幅された電波を犯人グループのもうひとりに送信し、電波をリレーしながら標的のクルマに近づいていく。
クルマは車体の近くにスマートキーがあると誤認してしまうのだが、そうなるとドアロックは解除されてエンジンが始動してしまい、クルマは持ち去られてしまう。
ドライバーがキーを持った状態じゃなく、家にいる場合でも油断はできない。戸建ての家で玄関近くにスマートキーを置いていて、車庫が玄関の前といったケースではリレーアタックの標的になってしまう。
その後、盗難車は一度エンジンを切ると走行できなくなるはず。だが、一度発進したあとに正規のスマートキー以外でエンジンがかからないことについても、すでに犯行グループ側は対策ずみで、それが無効になるように一度入手した電波を何度でも利用できるようにしているのだとか。
また、動かなくなったとしてもパーツごとにバラして海外に輸出してしまうケースも多いらしい。
■リレーアタックの犯行グループは2~3人であることが多い!
日本防犯設備協会によればリレーアタックの犯行グループは2〜3人であることが多いらしく、日本では昨年5月大阪府守口市で起きたケースが初だったという。
そして昨年9月、同じ大阪府の東大阪市ではレクサスLS500が窃盗団のリレーアタックにより、解錠された盗難未遂事件が発生(犯行グループは逃走)。さらに今年1月にも大阪府茨木市内でリレーアタックによる被害が確認された。
これまでリレーアタックの被害に遭ってきたのは2010年頃に確認された欧州が中心だったのだが、その波がいよいよ日本にも押し寄せてきたと考えるのが妥当だろう。
冒頭で記したとおり、自動車盗難件数自体は減っている。イモビライザーの標準装着以外にも、2001年9月に警察庁と日本損害保険協会を中心に設置された自動車盗難などの防止に関する官民合同プロジェクトチームの取り組みが成果を上げたことも背景にはある。
■自動車メーカー側の対策は?
ここでは各メーカーによるリレーアタック対策についてみていきたい。まずはトヨタとスバル。スマートキーのドアロックボタンを押しながら解錠ボタンを2回押すと、ランプが4回点滅して節電モード状態になる。
この状態だと、スマートキーでのボタン操作で微弱な電波が飛ばないようにできる。リレーアタックの手口がスマートキーのこの電波をねらったものであるため、その電波自体を発しなくするという現時点では有効な対策であることは間違いないだろう。
この節電モードにすると、スマートキーとしての利便性がなくなると気になる人もいるだろうが、スマートキーのどれかのボタンを押せば再び節電モードが解除されるようになっている。愛車から離れる際、節電モードに入れるようにしておくことを習慣化してしまうのがいいかも。
ちなみに、先代クラウン以降のトヨタ車に加え、2016年10月に登場した現行インプレッサ以降のスバル車にはこの機能がついている。
この両メーカーのクルマに乗っているユーザーは、節電モードにする方法を試すことでスマートキーのランプが4回点滅すれば対応しているのかどうかがわかる。
そのほかの国産メーカーでも現在、リレーアタックについては開発が進んできており、マツダでは2018年6月にリレーアタック対策を施した電子キーシステムの特許を複数取得している。
一方、輸入車はどうか。リレーアタックの被害が比較的早くから報告されていた欧州車のなかではメルセデスベンツの対策が進んでいるようだ。すべての車種ではないのだが、スマートキーの電波をオフにできるようになっている。
また、ジャガーランドローバー車の10万台以上が、英国で2017年春から2018年春にかけてリレーアタックの被害に遭ったことから、同社ではセキュリティ機能を強化。
レンジローバー、ランドローバーディスカバリー、ジャガーI-PACEの英国仕様についてはすでに対策ずみだという。日本仕様についても最新のセキュリティを装備するのは喫緊の課題となるだろう。
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