トヨタは2019年4月から販売店の統合を始めた。まずは東京都内のトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店を。その後2025年までに全国で販売店の一本化を目指す。
ディーラーの一本化が動き出したことで、もうひとつ、かねてからの「計画」実行も現実味を帯びてきた。「販売車種の半減」がそれだ。
車種の絞り込みは国内販売の維持のためという話もあるため、おそらくこの流れは止まらないのだろう。しかしそうなると自動車好きにとっては、「どの車種が消え、その車種が生き残るのか?」が重大な関心事になってくる。
たとえば、姉妹車でありながら、しかしともに販売好調を維持しているアルファード/ヴェルファイアはどうなるのだろうか?
どちらかが消えてしまうのか、それとも? 現時点での両モデルの売れゆきと今後の予想、現場営業マンたちの見通しや期待をレポートする。
文:遠藤徹
写真:TOYOTA、ベストカー編集部
■販売店一本化による「食い合い」が起こる?
2019年4月1日、東京地区のメーカー資本のディーラー4社(トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店)が統合され「トヨタモビリティ東京」が発足した。これを皮切りに2025年までに同様のディーラー1本化を全国レベルで実施する方針。
そこで注目したいのは、これまで姉妹車構成で、系列店別に専売ないしは一部併売していたモデルの統合、1本化の行方である。
特にアルファード/ヴェルファイアはどちらも好調な販売で、扱い店の重要な収益モデルであったから、どちらかに統合、1本化されればマーケットに大きな影響を与える可能性がある。
これまで全国レベルではアルファードがトヨペット店、ヴェルファイアがネッツ店の各専売だった。これをまず2020年1月からアルファードはトヨタ店、トヨペット店、ヴェルファイアはカローラ店、ネッツ店の各併売とする。
同時に両モデルともマイナーチェンジし、内外装のデザイン変更、新グレード、ボディカラーを設定するなどして商品ラインアップを強化する。トヨタ店、カローラ店の併売だった同クラスの別バージョンミニバンであるエスティマは2019年末をもって生産を中止する。
■現在の売れ行きを考えると「アルファードに一本化」か
今後アルファード/ヴェルファイアの統合、1本化はどうするのか。どちらも甲乙つけがたい人気モデルなだけに影響が大きい。
2019年1~2月の登録実績と前年同期比はアルファードが1万1559台、57%増、ヴェルファイアは7257台、11.4%減で明暗を分けている。この理由は2017年12月に実施したマイナーチェンジにある。

それまではヴェルファイアが一貫してリードしていたが、同マイナーチェンジによってアルファードを従来のヴェルファイアのように押し出しのよい大型グリルデザインに仕立てた。逆にヴェルファイアはおとなしめの顔立ちにしたことで、売れ行きに逆転現象が生じた。

こうなると統合、1本化についてはアルファードが俄然優位となる。しかしながらすんなりとはいかないようだ。扱い店を取材したところによると、手法はいろいろあることが予想される。
・ヴェルファイアをアルファードに統合。
・1本化するが、それぞれの特徴を盛り込んだグレードを継続させる。
・両ブランドを残しフルモデルチェンジで差をつける。
・従来モデルを継続させる。
などである。
どちらにしろ2025年までに系列店統合の過程を見ながらどちらかに統合、1本化することになりそうだ。
■ディーラーの声は?
【証言1】 首都圏トヨペット店
最近はアルファードのほうがよく売れているし、先に発売し知名度が高いので、こちらに1本化するのが自然だ。
ヴェルファイアとはボディパネル、エンジンなど基本コンポーネント、価格が同じだが、ブランドパワーが上であり、5年程度乗って代替えする時の下取り額は10万円くらい差がつく。こうなるとアルファードに集約するのが濃厚と考える。
【証言2】 首都圏ネッツ店
統合、1本化するのはごく自然と思われる。アルファードが残るのは現状からするとやむを得ない。ただヴェルファイアがこれまで培ってきた若者向けの個性的なマスク、カスタマイズのデザインなどは、後継モデルに引き継いでくれることを期待したい。
具体的にどのような形になるかは、2025年までの両モデルの販売推移を見ながら決定して行くことになると思われる。