「ランクル」が売れている。
世界的なブームとなり、日本でも人気カテゴリーに急成長したSUVながら、人気の中心は、トヨタのC-HRやホンダのヴェゼル、マツダのCX-5などオフロードだけでなく、日常での使い勝手にも優れるカジュアルなモデルたちだ。
そうしたなかで、硬派な“クロカン”(=クロスカントリーの略)のランドクルーザーが、いま人気を集めている。直近の2019年3月の販売台数は4012台と、マツダ CX-8(4392台)に匹敵し、SUVのなかでも8位の販売台数をマーク。
ランドクルーザーの価格帯は473.9万~684.7万円、弟分のランドクルーザープラドも同353.8万~536.3万円と価格は決して安くない。モデルの性格も考慮すると驚くべき好調ぶりといえる。
なぜ、いま硬派なランクルが支持されているのか? その背景には、ライバルとは異なり、地道な進化を遂げてきた実直な姿がある。
文:片岡英明/写真:編集部
世界で支持されるランクルの魅力とは
日本を代表するプレミアムSUVがトヨタのランドクルーザーだ。オフロード界のキングと崇められている「ランクル」は、レンジローバーと肩を並べる知名度を誇っている。その卓越した走破性能にはプロも惚れ込んだ。だから世界中に熱狂的なファンを持ち、乗り継ぐユーザーも少なくない。
今の時代、乗用車をベースにしたクロスオーバーSUVが持てはやされている。が、クラウンより長い歴史を誇るランクルは、初代モデルからタフな走りを売りにし、ファン層を広げるとともに信頼を勝ち取ってきた。
ご存じのように、ランドクルーザーには2つのシリーズがある。ひとつは、フラッグシップの「200系」だ。精緻な4.6LのV型8気筒ガソリンエンジンを積み、これに副変速機付きの6速ATを組み合わせた。
もう1つは弟分のランドクルーザー「プラド」だ。こちらはハイラックスと兄弟関係にあり、日本仕様は直列4気筒のクリーンディーゼルと2.7L直列4気筒のガソリンエンジンを設定。これに副変速機付きの6速ATを組み合わせた。仕向け地によっては6速MT車も設定する。
200系、そしてプラドともに強靭なラダーフレームを採用し、駆動方式はフルタイム4WD、トランスミッションはハイ/ローの副変速機を備えた本格的なもの。オフロードの走破性能は非凡だ。道なき道も走破できる高い潜在能力を秘めている。だから世界中で愛されているのだ。
ランドクルーザーシリーズの累計生産台数は800万台を超え、年間の販売台数は30万台を超える。メインマーケットは中近東だが、最近はアフリカやロシア、中国などの伸びも大きい。
ランクルは悪路や雪道は得意だ。が、舗装路のハンドリングはクロスオーバーSUVに遠く及ばない。ワインディングロードで安全に、速く走らせるのには、かなりのテクニックを必要とする。
だから、日本では一部のマニアだけがランクルを買うと思われていた。全世界のシェアを見ると、日本は10分の1にも満たない。
だが、ランクルファンは、驚いたことに、ここ数年増え続けているのである。
古参モデルながら国内で異例の販売増
ランクル200は2007年7月、プラドは2009年9月のデビューで、古参と言えるモデルなのだが、なんと販売台数が増えてきたのだ。
2019年の乗用車登録台数を日本自動車販売協会連合会(自販連)の資料で調べてみると驚きの連続だった。200系とプラドを合わせ、1月は2717台、2月は3065台、そして年度末の3月にはついに4000台の壁を破って4012台の登録を記録した。
SUV部門で3月のランキングを見ると、トヨタ C-HR(8952台)、ヴェゼル(8214台)、CX-5(6334台)、エクストレイル(6225台)、ハリアー(5074台)、フォレスター(5049台)、CX-8(4392台)に次ぐ8位なのだ。CR-Vやクロスビーよりも売れている。
もちろん、販売台数の約9割はプラドだ。価格の張る200系は月に300台程度にとどまっている。が、どちらも10年選手だから驚異の数字だ。
ついでに2018年4月から2019年3月までの2018年度の販売台数も調べてみた。ランクルは200系とプラドを合わせ、2万9075台を登録している。
これは乗用車部門の32位だ。29位がフォレスター、30位がCX-8、クロスビーが33位だから快挙と言えるだろう。意外にもEVのリーフや話題になったカムリはランクルシリーズより売れていないのだ。
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