■エンジンオイルの品質と粘度には規格がある
では、そのようにディーラーで定期的にオイル交換をする以外のオーナーは、どのようにオイルを選び、いつ交換するのがいいのだろうか。
オイルを選ぶためには、オイルブランドを知ってお気に入りの銘柄を決める前に理解しておくべきオイルの知識がある。
まずは粘度だ。オイルの粘度とは硬さのことで、粘度によって変わるのはエンジン内で形成される油膜の厚さだ。
同じ銘柄でも粘度の違うオイルが存在するのは、気候などの環境やエンジンの仕様によって、必要な油膜の厚さが異なるからだ。
油膜は厚い方が潤滑性は高いが、エンジンの部品同士の隙間が狭いと作れる油膜も薄くなるので、高い粘度のオイルでは上手く油膜を作れなくなるし、オイルポンプの抵抗も大きくなってしまう。
最近のクルマは0W-20など、極めて粘度の低いエンジンオイルを使用して、オイルの攪拌抵抗やポンプの損失を抑えている。
グレードはオイルの種類や品質を表すもので、APIが粘度と同様にオイルの品質をアルファベットで表示できるよう規格化している。
ガソリンエンジンはSJなどといったSで始まるアルファベット2文字で表示され(ディーゼルエンジン用はC~)、SJは2001年以前に生産されたクルマに対応するもので、SLは2004年までのクルマ、SMが2010年までのクルマといったように、アルファベットが進むと新しいクルマのエンジンに対応する規格になっている。
最新の規格はSN/RCと言われるもので、オイル自身の環境性能まで追求されたものだ。
またAPIでは、オイルの種類についてもグループI、IIが原油を精製した鉱物油で、水素化分解など高度な精製を行なった鉱物油がグループIII、PAO(ポリアルファオレフィン)などの化学合成油がグループIV、エステルなどより高性能な化学合成油がグループVだ。
APIとは別に日本でもオイルの品質に規格があり、このILSACはSJに相当するものがGF-2、以降数字が進むほど高い品質で省燃費や環境性能が高いオイルとなっている。
品質が高いオイルは、「油膜の強さが高い」と考えればいい。同じ油膜の厚さでも、摩擦が起こった時に強い油膜は油膜切れを起こしにくいので、エンジンの部品を摩耗から守ってくれる。この油膜保持性は、粘度とは別の性能なのだ。
ベースオイルというのは、エンジンオイルの主成分となるものだが、オイルの性能を左右するのは実は添加剤の方が影響力が大きい。
エンジンオイルの粘度を安定させたり、摩擦をさらに減らしたり、エンジン内のカーボンやスラッジを取り込んで分解するのは、添加剤の役割なのだ。
つまりグレードの低いオイルでも、良い添加剤を配合すれば高い性能のエンジンオイルができあがる。
普通のクルマのエンジンなら、これでも十分な性能だが、高性能車にはできるだけいいエンジンオイルを使ってやった方がいいだろう。
■クルマの性能に合った適度な価格のエンジンオイルを5000Km毎または半年毎に交換すべし!
ここまで理解したうえで、オイル選びを進めたい。実際に販売されているエンジンオイルを比較してみると、必ずしもグレードの高さと価格の高さが比例しているわけではないことに気付くはずだ。
よほどの粗悪品でなければ、ほとんどのエンジンにとって問題ない。最新のエコカーたちは、オイルによる抵抗も考えて超低粘度なオイルを使っているから、その粘度を守るようにして、他銘柄で価格がリーズナブルなエンジンオイルを選んでもいい。
1L、1000円以下のオイルもあれば、2000円以上のオイルもある。高いエンジンオイルは高性能で耐久性も高い。だから年間の走行距離が少なく、オイル交換の1サイクルが長い人には向いている。
あとはスポーティな走行を楽しむようなオーナーには、やはり高性能なエンジンオイル、できれば前述したエステル系エンジンオイルを使うことをお薦めする。やはりスポーツ走行を楽しんだ後には、オイル交換した方がいいだろう。
あまりお金をかけ過ぎずに、長く大事に乗ろうと思ったら、そのエンジンに対応した適度な価格のオイルを5000km毎または半年毎に交換した方がいい。
10万kmを超えてもエンジン内部が綺麗でコンディションのいいエンジンは、そういったメンテナンスを受けてきたクルマがほとんどだからである。
これだけクルマが進化しても、エンジンはクルマにとっては心臓、循環する血液と同じエンジンオイルは昔も今も生命線。エンジンオイルが汚れていないか、普段からチェックしてほしいものである。
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