低全高SUVは今後さらに台頭する可能性も
カテゴリーとの相性もある。セダンをこの全高でデザインすると、セダン特有の滑らかさやスポーティ感覚が削がれやすい。
フーガ、シーマ、レガシィB4は全高が1500mmに達するから、後席を含めて居住性はとても快適だが、外観はズングリと見えてセダンらしくない。今では実用派のセダンは、日本だけでなく海外でも売れ行きを下げて、フォードはセダン市場からの撤退を表明した。
プジョー508は、先代型は実用的で4名乗車の快適なセダンを用意したが、現行型はこれを廃止。その代わり5ドアハッチバックを加えたが、天井を低めに抑えたから、先代型のセダンに比べると後席が狭く閉鎖感が強い。
このように今のセダンやワゴンでは、実用重視が飽きられ、クーペと同じく背の低いスタイリッシュなクルマになりつつある。
大切なのは居住性や積載性などの実用性ではなく、格好良さだ。そのうえでセダンにはフォーマル、ワゴンにはアクティブ、クーペにはスポーティという世界観を与えている。
このような居住空間を狭くするセダンの変化も、全高を1500~1550mmに設定したSUVの登場を促しているだろう。機能にムダがなく合理的だから、これからさらに増える。かつてのセダンのように、乗用車の中心的な存在になるかも知れない。
背が高いSUVの今後はどうなる?
そして、居住性をミニバンのようにさらに快適に仕上げたい、荷室の機能を高めたいユーザーには、全高が1700mm前後に達するエクストレイル、フォレスター、CX-5、RAV4などが用意される。
これらの全高が1700mm前後のSUVなら、外観を大きく立派に演出したり、高い着座位置によって乗員が周囲を見降ろすことも可能だ。理屈では割り切れない情緒的な価値に基づき、全高が1700mm前後に達する背の高いSUVも堅調に売れ続ける。
今の自動車メーカーは、電動化を筆頭とする環境性能から自動運転まで、さまざまな技術開発に追われている。クルマを販売する地域も増えたから、日本向けの車両開発に費やせるコストは減ってきた。
その意味でも、既存の車種やプラットフォームを使って開発できるSUVは、ユーザーとメーカーの双方にとって、良い意味で融通を利かせやすい注目のカテゴリーだろう。
今後、新型車が一層積極的に発売されそうだ。
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