■レギュラー仕様でもハイオクの方がエンジンにいい訳
ということは、レギュラー仕様のエンジンにハイオクガソリンを入れても意味がないんじゃないか、と思われる方もいることだろう。
ハイオク仕様のエンジンとは、よりパワーを引き出すために圧縮比やブースト圧、点火時期などが最適化されているもので、ハイオクガソリンを使うことを前提にセッティングされている。
理論的に考えるとそうなのだが、実際にはハイオクを入れることでエンジンの性能がより引き出せる場合がある。
エンジンにはノックセンサーというノッキング特有の周波数を検知するセンサーが組み込まれていて、ノッキング初期にその衝撃を検知すると点火時期を遅らせて本格的なノッキングを回避している。
レギュラーガソリン仕様のエンジンでノックセンサーによる制御が入っている状態であれば、ハイオクガソリンにすることで、エンジン本来のパフォーマンスを取り戻せるのだ。
ほかにもハイオクを入れるメリットはある。エンジンは走行を続けていると吸気ポートを中心に燃焼室周辺にデポジットやカーボンが堆積していく。
レギュラーガソリンでは増える一方だが、ハイオクガソリンには清浄剤が添加されているので、この堆積物が少しずつ解消されていくのだ。
この効果だけを考えるなら、カー用品店で販売されているガソリン用の添加剤を追加してもいい。
ともかく、こうして堆積物が徐々になくなっていくことでエンジンは本来の性能に近付いていくのである。
エンジンの制御系が古い、少し前のスポーツエンジンはレギュラー仕様でもハイオクを入れた方が、確実にエンジンのためにはいい。
燃焼室にカーボンが蓄積されて圧縮比が上がってしまっている場合もあるし、水温が上昇気味になったりしてノッキングしやすくなっているクルマもあるからだ。
■ハイオク仕様にレギュラーガソリンがダメなワケ
ハイオク仕様のエンジンにも、当然ノックセンサーは組み込まれているから、レギュラーガソリンを入れてもノッキングを起こしてエンジンにダメージがおよぶことはない。
しかし、加速にはより多くアクセルを踏む必要があり、燃費は悪くなるのでレギュラーガソリンを入れるメリットはまったくないと言える。
輸入車の場合はまた少し事情が違ってくる。日本でハイオク指定となっている欧州車の多くは、実は欧州ではレギュラーガソリン仕様なのだ。
実はガソリンの規格が日本と欧米では異なっている。これが主な原因と言っていい。
欧州ではレギュラーガソリンのオクタン価は95以上となっているのに対し、日本はオクタン価89以上となっており90が一般的で、欧州車に日本のレギュラーガソリンを給油することは想定されていないのだ。
ちなみに日本のハイオクガソリンは96オクタン以上という規格で、98が一般的な数値である。
もちろん前述のノックセンサーなど、ガソリンのオクタン価に応じて添加時期などを調整してくれるが、少し前の輸入車では日本のレギュラーガソリンには合わせ切れず、確実にエンジンの調子が悪くなるクルマもあった。
また日本のガソリンは全国で安定した品質を誇っているが、そのクオリティが世界でもトップレベルと思っているよなら、それは少々古い認識と言わざるを得ない。
というのもひと昔前と比べ、日本のガソリンは劣化が早まった傾向にあるからだ。その原因の一つと考えられているのがETBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)の添加だ。
これは10年ほど前は添加されたモノがバイオガソリンとして販売されていたが、今はほとんどのガソリンにオクタン価向上剤として普通に添加されている。
欧州のエンジニアの間では、昔と比べて日本のガソリンの質が悪くなったという話もあり、原因は新たに添加されたこのETBE以外は考えにくい。
ただし、欧州でもETBEは普通にガソリンなどに用いられている(日本もフランスから輸入)から、日本だけが特殊な状況、という訳ではない。
燃費が良くなり、ガソリンスタンドが減ったこともあって、給油の回数は減る傾向にあるが、燃料ポンプの冷却のためにもタンク半分以上をキープして、月に2回くらいは給油してガソリンの鮮度を保った方がエンジンには良さそうだ。
コメント
コメントの使い方