中古車「ASK」最近急増の理由と事情 競合値引き対策なのか??

中古車「ASK」最近急増の理由と事情 競合値引き対策なのか??

 中古車を購入したい場合、昔は電話帳ほどもある中古車情報誌を購入し、探していましたが、今ではネットで探すことが多くなりました。

 最近、ASKという価格表示が多いことに気が付きませんか?

 この「ASK」は価格応談という意味で、お店に連絡して価格を聞いてくださいという意味なのはわかるのですが、やたら多すぎて「いちいち連絡しなければいけないのか?」と疑問に思っている人も多いハズ。

 また、連絡してみると、お店から聞いた価格は異常に高騰していて、これだったら最初から価格を掲示していれば、連絡することはなかった、なんて思っている人もいるでしょう。

 そのほか、「検2年付き」、「修復歴あり」の表示もわかりにくいですよね。そんな中古車購入にまつわるギモンに答えてもらいました。

文/伊達軍曹
写真/ベストカーWEB 自動車公正取引協議会 日本自動車査定協会 Adobe Stock

ASKってなんのこと?

中古車メディアサイトのプライスボードに掲げられたASK表示
中古車メディアサイトのプライスボードに掲げられたASK表示
歴代GT-Rの中古車価格が高騰しているが、なかでも希少価値が高いモデルや走行距離が少ないもの、ノーマルのものがASK表示になっている
歴代GT-Rの中古車価格が高騰しているが、なかでも希少価値が高いモデルや走行距離が少ないもの、ノーマルのものがASK表示になっている

 中古車の世界は独特の用語や風習なども多いため、不慣れな人からすると「微妙にわからん」ということも多いかもしれません。

 そこで、代表的と思われるいくつかの「微妙にわからん中古車用語」について、なるべくわかりやすく解説したいと思います。

 まずは価格表記における「ASK」または「応談」というもの。要するにこれは「価格応談」ということで、「ここに価格は明示しませんが、お問い合わせいただければお教えしますよ」という意味です。

 なんでこんなややこしい書き方をするのかといえば、理由は主に3つあります。

 ひとつは、「その価格の背景(理由)を説明しないでただプライスだけを書くとドン引きされるから」というケースです。

つい7~8年ほど前までは930ボディの911ターボは年式にもよるが高くても900万円前後だったが今では軽く1300万円オーバー

 古い世代の希少名車で最近増えているパターンですが、仮に1980年代のポルシェ911ターボの想定売価が1280万円だったとします。……かなり高いですが、お店側としては、その値付けにも一応「理由」はあるわけです。

 しかしその理由を説明するだけのスペースがないまま、ただ「1280万円」と書いてしまうと「た、高すぎる……」みたいな感じでドン引きされ、問い合わせ数は限りなくゼロに近づきます。

 そういった事態を避けるために、まずは「ASK」と表示し、興味を持って連絡をしてきた人に対してだけプライスを開示して、その背景というか理由を説明するのです。

 もうひとつのケースは「価格を同業他社に真似されないため」です。例えばあなたが希少輸入車専門店の社長で、とある希少車に「800万円」というプライスを付けたとしましょう。そしてその800万円は決してボッタクリ価格ではなく、わりと良心的な値付けだったとします。

 しかしその800万円を広告などで明記すると、流通量が極端に少ない車種なのでそれがひとつの「相場」になってしまい、他の業者がそのプライスを真似するんですね。

 真似するだけなら別にいいのですが、よくあるのが、同じような車種に「800万円よりちょっとだけ安い値付け」をしてぶつけてくるパターンです。例えば730万円とか。

 そうなると、仮に年式や走行距離などがおおむね似たような水準だったとすると、消費者の目はどうしたって730万円のほうに目がいきがちなので、苦労して値付けをした自分が馬鹿を見ることになります。

 これを避ける意味で、相場がいまひとつ明確ではない希少車では「ASK」となる場合も多いのです。

964カレラRSや964RS3.8、993カレラRS、993GT2などの”役付き”の911の場合、ASK表示が多い。ちなみに写真の1992年式964カレラRSの場合、10年ほど前は700万~1000万円だったが、今では3000万円は下らない。数年のうちにこれだけ価格が高騰し続けると、相場がわからないのでASK表示もしかたないのかもしれない
964カレラRSや964RS3.8、993カレラRS、993GT2などの”役付き”の911の場合、ASK表示が多い。ちなみに写真の1992年式964カレラRSの場合、10年ほど前は700万~1000万円だったが、今では3000万円は下らない。数年のうちにこれだけ価格が高騰し続けると、相場がわからないのでASK表示もしかたないのかもしれない

 もうひとつの理由は「冷やかし客を遠ざけるため」です。中古車屋さんも忙しいので、「本気ではない客にいちいち対応するのは面倒」と内心では思っています。

 そのためまずは「ASK」と表示し、それでも食いついてくるお客(=買うかどうかはさておき、決して冷やかしではないお客)だけを相手に、マジメに対応するというパターンです。

 ほかにも理由はあるでしょうが、主にはこんなところです。そして前述の3つの理由が複雑にからみあった結果として、中古車の世界に「ASK」はしばしば発生するのです。

 気になった中古車の価格が「ASK」だった場合はどうすればいいかというと、いちばんは電話で軽くアポを取った後、直接販売店まで行くことです。そうすればほとんどの社長さんやスタッフさんは、快く想定価格を教えてくれ、いろいろ話してくれるでしょう。

 しかし「販売店まで行くのは正直めんどくさい」というのもあるでしょう。わかります。その場合は電話で問い合わせれば、たいていは普通に教えてくれます。

 カーセンサーやグーネットなどの中古車情報メディアサイトでは、中古車販売店へ向けてメールでの問い合わせフォームがあり、その中古車の「在庫確認・見積依頼」をメールで送ると、たいていは1日程度で、価格やクルマの状態を教えてくれるサービスを実施しています。

 この問い合わせフォームで中古車販売店にメールしても、中古車販売店への冷やかしが多いのか、下記のような返事をするところもあります。

「ご要望車両のお問い合せは電話およびメールでのご返答は受け付けておりません。具体的なコンディション、契約納車までの詳しいお話をご希望されるお客様につきましては、誠に恐れ入りますが、ご来店予約後をしていただいてから、商談を進めさせていただく流れとなります」。きっと冷やかし客にうんざりしているのでしょう。

 では、ASKと書かれているクルマはどういうクルマが多いのか? 台数の少ない限定車や希少価値の高い旧車、走行距離の少ないワンオーナー車、程度が極上、レストア済み、といったクルマです。

 昨今の旧車人気を受けて、ひと頃に比べるとありえない価格に高騰しているので、問い合わせをしてみると、ビックリするケースが多くなっています。

 消費者からの立場から見れば、ASK表示をしている中古車の購入は、いちいち問い合わせしなければならないため、面倒くさいものは選択肢から外してしまうということにもつながります。買う側のことをもうちょっと考えてほしいものですね。

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