■暫定2車線区間の安全性を問う
日本の暫定2車線高速道路の中央に設置されているワイヤーロープ式防護柵のワイヤーは、深さ2.6mまで打ち込まれた両端のアンカーによってのみ固定されていて、中間支柱(鋼管製)は、ワイヤーの高さを維持する程度の強度しかない。あまり強度がないほうが、支柱への衝突による衝撃を和らげることができるし、破損した場合の交換も容易なのだ。
ワイヤーロープの本数は5本で、最上段の高さは約1m。車両がぶつかると、中間支柱はほとんどもげるか折れ曲がり、アンカーで固定されているワイヤーの張力だけで、クルマが反対車線に飛び出すのを防ぐ。
ワイヤーは非常に丈夫だが、弾力性があるので、クルマがぶつかると反対車線へのはみ出しが発生する。性能試験では、大型トラックがぶつかった際、反対車線に約1.5mはみ出して食い止めている。それでもロープが切断されることはなく、正面衝突を防ぐ効果は大きいという結果が出ている。
2022年までに発生した反対車線への飛び出し事故はいずれも大型トラックで、乗用車の反対車線への飛び出しは1件もなく、接触事故によるけが人も出ていない。人は確実に守ってくれるわけだが、車両の表面的な損傷は小さくない。
ワイヤーは伸びて緩衝の役割を果たすが、ガードレールのように面で支えるのではなく、線で支えることになるから、その分接触部にかかる力は大きくなる。
ワイヤーは時としてノコギリのような凶器にもなる。オートバイの事故では、ライダーの体が電柱を支えるワイヤーで切断されてしまった例もある。接触すればクルマのボディもズタズタになる。私が目撃した軽ハイトワゴンの事故例は、細い支柱が右前輪にからみ、ワイヤーの張力でもぎ取られたのかもしれない。暫定2車線区間を走る時は、「右側30cmにチェーンソー」と頭に入れておきたい。
ワイヤーはガードレールより視認性が低く、うっかり接触しやすい面もある。その対策として国交省やNEXCO各社は、現在、中間支柱への反射材の設置を進めている。
ワイヤーロープ式防護柵の設置によって、暫定2車線区間の安全性は確実に増した。しかし、暫定2車線高速という存在自体が世界的に見て驚くべき貧しさであり、チェーンソーもすぐ近くに迫っている。制限速度が低いから時間短縮効果も小さい。せめて料金は4車線高速の半額にすべきではないだろうか。
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