世界に冠たる貧乏高速・暫定2車線のワイヤーロープは、クルマにとってチェーンソーでもある!【清水草一の道路ニュース】

世界に冠たる貧乏高速・暫定2車線のワイヤーロープは、クルマにとってチェーンソーでもある!【清水草一の道路ニュース】

■ワイヤーロープの功罪

 トンネルや長い橋には構造的に設置が難しいため、すべてをカバーすることはできていないが、現在、合計1500kmに設置が完了。反対車線への飛び出し事故は、2016年度には年間194件あったが、設置区間では2022年までに計13件しか起きておらず、死亡事故もゼロ。大きな効果を上げている。

 ただ、従来フニャフニャのラバーポールだったのがワイヤーロープに置き換わったため、接触事故は激増しており、2018年から2022年11月までで6257件に上っている。

ワイヤーロープ設置以前に設置されていたのはプラスチック系素材でできたラバーポール。車体を傷つけにくいものの、その対向車線への飛び出しを防ぐことはできず……
ワイヤーロープ設置以前に設置されていたのはプラスチック系素材でできたラバーポール。車体を傷つけにくいものの、その対向車線への飛び出しを防ぐことはできず……

 なにしろ暫定2車線区間は、車線右側に余裕がない。4車線以上の高速なら、まず中央分離帯側の側帯の幅が0.5~0.75mあり、そこに側溝が設けられていたり、ガードレール手前に縁石があったりするから、わき見などではみ出しても、ガードレールに接触する前にドライバーが気付く要素が多い。しかし暫定2車線の場合、車線から30cm右に逸れると、いきなりワイヤーに接触してしまう。

 しかもこのワイヤーロープ、通常のガードレールに比べるとダメージを与えやすいのかもしれない……と思ったが、車両や乗員に与えるダメージは、「ガードレールよりもワイヤーロープのほうが小さい」というデータしかない。なぜならワイヤーロープには弾力性があり、衝撃を吸収するからだ。

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