愛車の「指定空気圧」を意識したことはあるでしょうか。タイヤには最適な空気圧があり、自動車メーカーは車種・タイヤサイズごとに「指定空気圧」を決めています。
ほとんどの国産車は、運転席ドアの内側に指定空気圧が記載されているので、チェックしている方も多いでしょう。
近年、この指定空気圧が高い車が増えてきています。
昔は指定空気圧が180~200kPa(1.8~2.0キロ)程度の大衆車が一般的でしたが、最近では230~240kPa(2.3~2.4キロ)という車も頻繁に見かけるようになってきました。
一例をあげると、人気車のアクア(15インチ車)は前後輪ともに270kPa、プリウスも一部グレードで前輪が260kPa、後輪250kPaとかなり高い数値となっています。
なぜ、指定空気圧が高い車が増えているのでしょうか? 背景には、タイヤに関するトレンドの変化が大きく関わっています。
文:斎藤聡
写真:編集部
空気圧が高くなった背景には“大きく薄いタイヤ”の流行も関係
車の指定空気圧はなぜ高くなったのでしょうか。端的に答えから言ってしまいましょう。理由は2つ考えられます。
1つは転がり抵抗を良くするため。もう一つはタイヤサイズが大径・低偏平化…つまりタイヤが大きく薄くなっているのが理由です。なぜなのか、説明したいと思います。
タイヤは1輪で受け持つことのできる「最大負荷能力」が決まっています。これをロードインデックス(荷重指数)にしてタイヤに表示しています。
たとえば215/60R16(※順にタイヤの幅〈mm〉/扁平率、インチを表わす)サイズのタイヤは、荷重指数が95になります。
ホイールサイズを2インチ大きくして、ほぼ同じタイヤ外径の225/45R18にすると、ロードインデックスは91に下がってしまいます。タイヤ内の空気容量が少なくなるとロードインデックスは下がってしまうのです。
そのためタイヤ外径がほぼ同じなのに、タイヤの負荷能力が足りないので、インチアップして装着することができなくなってしまうのです。
これに対応するために作られたのがエクストラロードタイヤとか、レーンフォースドタイヤと呼ばれる「強化タイヤ」です。
JATMA (日本タイヤ協会)の規格は、240kPaで最大負荷能力を発揮し、空気圧は180~240kPaの範囲で使うように指定されています。
これに対して“強化タイヤ”は、最大空気圧が290kPaに引き上げられ200~290kPaの範囲で使うようにタイヤ構造が強化されているのです。
エクストラロードタイヤの215/45R18は、空気圧を290kPaにした時、ロードインデックスが95になります。
つまり、ホイールを大径化して低偏平なタイヤが採用されるようになると、荷重指数が下がる傾向にあるので、エクストラロードのタイヤを使って荷重指数の不足を補うことができる。
その結果、見かけ上の空気圧が高くなるということです。
補足しておくと、JATMA規格の空気圧は180~240kPaです。いわゆる強化タイヤは欧州のタイヤ規格であるERTRO(ヨーロッパ・タイヤ及びリム技術機構)のものです。
ERTROには180~250kPaで使うスタンダード空気圧と200~290kPaで使うエクストラロード(レーンフォースド)タイヤの2つの規格があります。
見分け方は、JATMAは無印。ETRTO規格のタイヤは丸に「E3」とか「E4」の刻印がタイヤ側面に付けられています。エクストラロードタイヤ、レーンフォースドタイヤは“EATRA ROAD”や“REINFORCED”の刻印が同じようにタイヤの側面に刻印されています。
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