ランボルギーニの伝道師、スーパーカー評論家が、跳ね馬の本拠イタリアで、フェラーリ488スパイダーを試乗。それぞれにしかない魅力とは!?
TEXT/西川 淳
「ランボ派」西川淳のフェラーリ488スパイダーレポート
とかく人は他人にレッテルを張りたがるもの。クルマ評論家業界でも、「あの人はトヨタ派だから」とか「やっぱり彼はホンダ派なんだよね」とか、まぁ、いろいろある。言ってしまえば、それもその人の個性のうち。くだんのメーカーから〝お仕事〟をもらっている・いないに関わらず、贔屓スジがあること自体、別に悪いことじゃない。
ボクはどうやら「ランボルギーニ派」だと目されているらしい。けれども、実をいうと、それが心地いいと思えるほどに肩入れしているわけじゃないのだ。’90年代まではフェラーリのことしか眼中になかった。「スーパーカー派」と呼ばれるならまだしも、「ランボ派」は限定され過ぎなんちゃうん、と思う。
自分のなかでは「趣味のクルマ派」くらいの大きな枠組みで仕事をしているつもり。「ランボ派」なんて小さくまとめられては少々ツライ。というわけで、ボクはフェラーリの試乗会だって、呼ばれれば喜び勇んで行く。ランボルギーニも、フェラーリもマクラーレンも、大好物なのだから。
最新V8フェラーリ488スパイダーとは
新型488シリーズの説明を始める前に、ひとつだけ、フェラーリのモデルチェンジ手法をおさらいしておきたい。
488シリーズは、基本のコンセプトやパッケージングを先代458シリーズと一にする、言わば〝ビッグMC〟。フェラーリは二世代ごとに〝FMC〟するのが慣例で、過去のV8ミドで言えば、308と328、348と355、360と430、がセットだった。
そして、各セットの間で、パワートレーンを大きく変更する。つまり、モデルチェンジとパワートレーンチェンジを〝交互〟に繰り返しているのだ。
それゆえ、458がデビューした当時から、〝次〟のパワートレーンへの関心は高かった。いわく、「いよいよV8ミドも次はターボカーになる」。
フェラーリにも、ダウンサイジング時代がやってきた。すでにカリフォルニアTで〝ターボ・フェラーリ〟は披露済み、とはいうものの、やはりV8ミド系へのターボエンジン搭載は、衝撃的で、時代の活気を感じさせる出来事だと言っていい。
488に、すぐさまスパイダーが加わったのは458という下敷きがあったからに他ならない。リトラクタブルハードルーフの開閉システムは458と同じものだが、45㎞/h以下なら走行中操作も可能となった点が大きな違い。開閉時間は14秒。
3・9ℓ直噴V8ツインターボエンジンは、特に3000回転から最大トルクを発することに注目だ。
ちなみに、CO2排出量そのものは、わずかな減少に留まる。つまり、フェラーリのターボ・ダウンサイジングは、環境性能をただ単に改善するのではなく、維持しながら大幅な性能アップを図ったもの、と考えた方がいい。
性能を犠牲にしてまで環境に貢献するつもりは、さらさらないというわけだ。逆に、性能が上がるのであれば、ターボだってHVだって、何でもやりますよ、という姿勢をフェラーリは見せたということでもある。
さて、そろそろ、肝心の乗った印象を報告するとしよう。
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