圧倒的な進化と注目のターボの味
国際試乗会が開催されたロマーニャ地方。最初のワインディングロードは、とにかく荒れていた。「ここでフェラーリにまじ乗れっていうの? パンダの四駆じゃあるまいしa」と、文句も言いたくなるくらい、そりゃもうひどい荒れようだった。
ところが、そこで奇妙なことに気づく。クーペ状態はもちろんのこと、オープンにしても、さほどゆさゆさせず、しっかりとしていて、乗り心地も悪くない。あれ? 458スパイダーでこんなところ走ったら、ぐらぐらしちゃうはずだぞ……。
458イタリアと同スパイダーとでは、目指す走りの性格がはっきりと違っていた。前者は硬派でスポーツ志向が強く、後者はボディのねじれ剛性がクーペから35%も下がっていたから無理をせず、ややラグジュアリィ志向にアシ回りをセットしていたのだ。
シリーズの進化版である458スペチアーレとそのスパイダー版のA(アペルタ)では、ほぼ同等と言われていたから、488でクーペとスパイダーの差が縮まることは、大いに期待できたけれども、ここまで〝近くなった〟とはa
もちろん、オープン状態では、連続するギャップを超えるときなど、ステアリングホイールなどに捌ききれない振動が出ることもある。けれども458スパイダーのように、ハンドルやフロアからダッシュボードまでゆさゆさ揺れるということはない。
乗り心地のよさと、低回転域では非常に躾の行き届いた扱いやすいパワートレーンに感心しながら、荒れた苦行区間を終え、オープンロードに出た。
軽くアクセルペダルを踏み込んでいく。キレ味鋭くエンジンが反応し、いっきに3000回転へ。背後から大きなウチワにガバっと煽られたかのように車体がすっと軽くなり、途端に前方へと弾き飛ばされた。
〝ワオa〟。驚いてアクセルを戻してしまい、隣の齊藤さん(エンジン誌)とカオを見合わせ、ニヤリ。すぐさま前を向き直しフルスロットルa エンジンの回転フィールは鋭いNAのようで、かつギュッと凝縮された精緻さがあり、右足裏に感じるふんだんなトルクと、意外にも回すと太いがキレイなサウンドが、もっと踏めと乗り手を煽る。
あ、これを知っちゃうとフツウのNAにはもう戻れないかも、と思った。なるほど、458スペチアーレのように高回転まで至るプロセスを楽しむわけにはいかない。けれども、さりとて、マクラーレンのターボカーのようにエンジン自体の面白みに欠けるということがない。実にフェラーリらしいターボカーだ。
クーペと同等の性能を手に入れた、という点では、マクラーレン650Sと同じ境地に達している。ただし、カーボンボディの650Sのようにまったく同じというわけにはいかない。そこを〝らしい〟官能性で補う。
あとは、今、オールマイティな速さとライドクォリティを誇るランボルギーニウラカンのスパイダーとの勝負がどうなるか。あちらもハイブリッドボディの採用で、屋根を開けてもかなりしっかりしたボディになっているはず。
しかも、大排気量V10のNAだ。未試乗ゆえ即断はできないけれども、クーペ同様、まるで違う個性のぶつかり合い、いい勝負になりそうである
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