欧州車がPHEVに積極的な理由
そんな、いまひとつブレイクできないプラグインハイブリッド車ながら、欧州車勢が妙に熱心なのを不思議に思う人もいるのではないかと思う。
ベンツは日本市場ではS、E、GLC、GLCクーペにPHEV仕様を設定。間もなくCクラスにも追加される予定。
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アウディは現在日本では販売していないが、欧州ではQ5、A6、A7、A8に新開発のPHEV仕様がある。また、BMWは日本市場でもPHEV展開に熱心で、7,5,3,X5、そしてFFの2シリーズやミニにすらPHEVモデルが用意されている。
ところが、実はこれ、環境規制当局による“インセンティブ”なのだ。
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ご存じのとおり、EUでは2021年から走行1kmあたりのCO2排出量を95g以下に規制する厳しい環境基準が施行される。
これは、ガソリン車の燃費でいうと25km/Lに近く、大型大排気量車の多い高級車メーカーにとっては、ほぼ達成不可能な高いハードルとなっている。
そこで、環境規制当局はPHEV車に関しては「(EV航続距離+25km)÷25」という「削減係数」を算出させ、エンジン走行による実際のCO2排出量を、この削減係数で割った数字をカタログ上のCO2排出量として認めるという救済措置を設定したのだ。
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ありていにいえば「PHEV化すればゲタを履かせてあげますよ」ということ。地元メーカー保護のため環境規制ルールを捻じ曲げたと言われても反論できないところだ。
この計算式を使えば、EV航続距離が25kmあればカタログ上のCO2排出量は半減。50kmあれば三分の一になって、CO2排出量270g/km(リッターあたり8km)台でも余裕で規制をクリアすることができる。
コストに余裕のある高級車メーカーがこぞってPHEV仕様を設定するのは、この抜け穴狙いと言っても過言ではないのだ。
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今後もPHEVは主流には成り得ない!?
思い返せば、日本でハイブリッド車ブームが始まったころ、欧州勢は「あれじゃコスト割れ必至」と冷ややかな目で見ていたわけで、その対抗策として「環境志向パワートレーンの本命はダウンサイズターボとクリーンディーゼル」という路線を選択した。
結果として、低コストな量産ハイブリッド車を生み出すことができず、例の不正問題でディーゼルにも逆風。起死回生のEVシフトは中国の政策変更で雲行きが怪しくなり、CO2排出95g規制対応もそろそろ時間切れで待ったなし。まさに八方塞がりの状態だ。
PHEVも悪くはないんだけれど、やっぱり環境パワートレーンの本命は低コストなハイブリッド。そこから、ピュアEVに緩やかに移行してゆくというのが自然なんじゃないかなぁ?
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