メルセデスベンツ,ロールスロイスを愛したのは昭和の名宰相だった

 吉田茂元首相の愛車が国会議事堂となりに飾られた。

 文/清水草一

吉田茂といえば、戦後日本を代表する大宰相。

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吉田茂元首相

 1963年、吉田茂の85歳の誕生日に神奈川県大磯の自宅に300SEロングセダンが届けられた。5期通算6年2カ月にわたって首相を務め、サンフランシスコ平和条約と日米安保条約を締結し、戦後日本の復興の道筋を決めた偉大なるワンマンでした。

 その吉田茂元首相の愛車だったメルセデス・ベンツ300SEが、国会議事堂となりの憲政記念館で開催された『戦後復興への道のり│吉田茂・鳩山一郎│特別展』に11月27日まで展示されました。

 吉田元首相の愛車としては、ロールス・ロイスも有名です。吉田氏が駐英大使時代(1936〜1939年)に現地で購入したもので、1937年式の「25/30HP」というモデルでした。これを外務省退官後日本に持ち帰り、戦後も長く愛用しました。

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外装同様に内装もまるで新車のように美しい

 吉田元首相は、終戦直前から神奈川県大磯町の私邸(’09年、漏電により惜しくも焼失)を住まいとしていましたが、東京までの行き帰りは、このロールス・ロイスの後部座席に陣取ったそうです。

 当時東京から湘南間は国道1号線を走るしかなく、東海道線を横切る戸塚大踏切の渋滞に業を煮やした吉田氏が、バイパスとなる戸塚道路(現在は横浜新道の一部)の建設を指示したというエピソードがあり、吉田氏にちなんで「ワンマン道路」と呼ばれました。

 このロールスは現在、埼玉県加須市の『ワクイミュージアム』に動態保存されており、たびたびドラマ等の撮影にも使われているんですね。ナンバーも当時のままです。

 そして今回展示されたメルセデスですが、茨城県在住のメルセデス愛好家、前山健一氏が所蔵なさっているもので、こちらも自走可能です。

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気品を感じる展示風景だ

 吉田元首相のベンツは特別展の第2会場である国会参観用のバス駐車場内の建物で展示された。

この名車にはこんな逸話があった…

 1954年、吉田首相が西ドイツを訪問した際、アデナウアー首相と「貴国復興の暁にはドイツ車を購入する」との約束を交わしました。ただ、その時は輸入制限があり断念。その年末、吉田氏はついに首相の座を降りました。

 ’61年に輸入制限は解除されましたが、当時は入札制で1500万円という高額入札になって再び断念。しかし’63年、事情を知った簗瀬次郎氏(ヤナセ社長)が手を尽くし、9月22日(吉田氏の誕生日)、バラの花束とともに大磯に届けられたとのことです。

 喜んだ吉田氏は、アデナウアー氏に「われ約束を果たせり。新しいベンツに本日から乗っている」と打電。西独からは「約束をお守りいただいたことを心から感謝する」との返信が届いたそうです。その直後に吉田氏が政界を引退したのも、歴史の巡り合わせでしょうか。この時の価格は530万円。当時の物価水準から考えると、現在の2300万円ほどに当たります。

 この納車の約4年後、吉田元首相は大磯の自邸で満89歳にて永眠なさいました。合掌。まさに歴史の重み満載の重厚なる一台です。

メルセデスベンツ300SEロングとは?

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 メルセデス・ベンツ300SEロングセダンは、フィンテールのデザインが特徴であるW111型のトップグレードの内外装をさらに高級にして3ℓ直6エンジンを搭載、エアサスペンションや4輪ディスクブレーキを採用した。

 1961年に登場した「300SE」(W112型)がベース。そのホイールベースを100㎜延長し、1963年に追加されたストレッチモデルが300SEロングセダンである。当時の新車価格は530万円。ちなみに1962年登場の2代目トヨペットクラウンは約100万円だった。

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