苦戦続くワゴンの現状 3ナンバーは特に厳しく…
今では少数になった国産ワゴンを見ても、ミドルサイズの価値観は欧州車的だ。レヴォーグとアテンザワゴンは、低重心による優れた走行安定性に特徴がある。
コンパクトなカローラフィールダー(近々フルモデルチェンジしてツーリングに変わる)は、運転のしやすさが一番のメリットだ。
背の高いコンパクトカーが嫌いなユーザーにとって、扱いやすい5ナンバーサイズのボディとスマートな外観を両立させたカローラフィールダーは、貴重な選択肢になっている。
シャトルはフィットのロング版で、荷室を約300mm伸ばしたことによる大きな積載容量が魅力だ。外観はカローラフィールダーと違ってズングリしてワゴンらしくないが、ミニバン的な実用性を持たせた。
このうち、ミドルサイズワゴンの売れ行きを見ると、レヴォーグが圧倒的に多い。2019年1~7月の1か月平均で1100台前後を登録している。
ほかの車種の場合、マツダ6(旧アテンザ)はワゴンだけなら240台前後だ。レガシィはツーリングワゴンを廃止して実質的にレヴォーグに変わったから、SUV風のレガシィアウトバックは330台にとどまる。
つまりレヴォーグは、マツダ6やアウトバックの3~4倍は売れているわけだ。
なぜレヴォーグだけが堅調に売れるのか
なぜミドルサイズワゴン市場では、レヴォーグの1人勝ちなのか。
理由の筆頭は、レヴォーグが日本でワゴンを欲しがるユーザーに向けて開発されたからだ。
全長は4690mm、全幅が1780mmのボディは、優れた走行安定性を確保しやすいサイズで、取りまわし性も損なっていない。デザイン的なバランスも良く、視界も優れているから、街中でも運転がしやすい。車内は後席を含めて広く、荷物の積載性も良好だ。
そして、ボディとサスペンションは入念にセッティングされ、水平対向エンジンの搭載と相まって重心が低い。全車に4WDが採用され、走行安定性も優れている。
エンジンは1.6Lターボと2Lターボだから動力性能が高く、ワゴンらしい走りの良さを満喫できる。STIスポーツも設定され、走行性能をさらに高めることも可能だ。
ワゴンの実用性と走りの良さを高次元でバランスさせたレヴォーグの特徴は、レオーネや初代レガシィツーリングワゴンから受け継がれたスバル車の中核的な魅力でもある。
従ってスバルが好きなユーザーであれば、実用性と走りの楽しさを兼ね備えるワゴンにも愛着があり、自然にレヴォーグを選ぶ。スバルのブランドイメージを最も色濃く反映させた車種がレヴォーグだ。
その点でマツダは、魂動デザインとスカイアクティブ技術を確立させたCX-5が中心的な存在だから、マツダ6は脇役的な立場になる。
レガシィアウトバックは、主流をレヴォーグに譲ったから、ボディの大型化も含めて今では選びにくい。そしてSUVが欲しいユーザーは、レガシィアウトバックではなく、適度なサイズでSUVらしさが濃厚なフォレスターを選ぶだろう。
改めてワゴンの魅力を考えると、セダンの派生型であることに価値がある。ミニバンに比べると荷室は狭く、走破力はSUVに負けるが、低重心だから走行安定性と乗り心地を向上させやすい。
そのためにハイパワーなエンジンの搭載も可能で、峠道などを走ると運転の楽しさも満喫できる。
レヴォーグはセダンベースのワゴンではないが、ワゴンカテゴリーの特徴に注目して磨きを掛けた。
スバル車の、そしてワゴンの代表がレヴォーグだから、好調に売れるのだ。
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