自動車業界初のマイナス金利ローンは、なぜ生まれたのだろうか?

渡辺陽一郎が指摘 「マイナス金利は話題作りの建て前に過ぎない」

 最近は輸入車を中心に低金利競争が激化している。VWは時期に応じて年率0.99%を実施して、シトロエンとプジョーなどは0%金利を採用することがある。

 その極めつきが、ジャガーがXEとXFで開始した「マイナスローンプログラム」だ。金利相当額の0.1%を差し引いた上で、0%ローンを組むため、支払い総額が車両価格を下まわる。

 しかし、販売店にたずねると、話題作りの建て前だとわかった。実際に買う時は、現金、ローンともに値引きをするから、車両価格の489万円(XE PURE)を支払うことは考えられない。

 マイナスローンは宣伝文句で、0%ローンとして運用される。販売店も「今では0%ではインパクトが乏しく、マイナスの言葉を使った」と言う。

 ローンを運用する時に、損益の分岐点になる金利は約4%だ。これを下まわるとローンの使用に基づく損失が増えて、コストを費やす販売促進になる。

 そうなると0%金利は相当なコストを費やす。現金で買う時は値引きが増えないと損をするが、販売店によると「値引き額は現金でもローンでも同額」とのことだ。

 これでは現金で買えるユーザーもローンを使うだろう。ジャガーにかぎらず0%金利は、ローンの使用を過剰に促す。そしてローンを使えば長期間にわたり多額の債務を抱えることになり、ユーザーの危険負担も増える。

 また低金利ローンでは、グレードや装備を選ぶ時に、支払い総額よりも月々の返済額を気にする。「わずか6000円増える程度なら、上級グレードにしよう」と考えやすい。これも落とし穴だ。

 そもそも「マイナス金利」は民間の銀行が日本銀行に預けたお金のうち、法定準備金を超える金利がマイナスになる政策。個人の預金金利がマイナスになるとか、銀行から無利子でお金を借りられるといった話ではない。「マイナスローンプログラム」はユーザーを軽く見た販売促進のようで、不快に思うユーザーもいるだろう。

 お金を借りたら利息を付けて必ず返済するのが世の中のルールだ。0%金利は通信販売で古くから使われるが、個人的にはお金にだらしない印象を受ける。金利以上にブランドイメージを下げてしまう。

 以上が渡辺陽一郎氏の意見だが、話題作りの側面が強いという厳しい見方となった。だが、それをわかったうえで、あえて乗ってみるのも手。ただし、マイナス金利であろうとローンは借金であることはお忘れなく!

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