トヨタは「トランプ関税」に苦悶せず、空飛ぶクルマで世界を目指せ!

■トヨタには「空飛ぶクルマ」への夢がある

 そんな中、「上海モーターショー」で、トヨタも勝負に打って出た。モーターショー開幕前日の4月22日、同社の上田達郎執行役員(中国本部長)が、レクサスの車体及び電池の上海新工場設立の協定に署名したのだ。同市金山区の新工場は、年間生産能力10万台で、6月に着工し、2027年の稼働を目指す。

 1978年に改革開放が始まった中国は、1984年にドイツのフォルクスワーゲンが上海に進出したことから、現代的な自動車産業が始まった。21世紀初頭までの中国市場は、上海汽車と合弁したVWの独壇場とも言えた。

 上海の「第2の大波」は、2018年にテスラが巨大なEV工場を建設したことだ。この工場が、世界の自動車市場を「EV化」に向かわせる牽引役となった。昨年10月には、早くも累計生産台数が300万台に達した。

 トヨタは今回、上海で「第3の大波」を起こそうというのだ。世界の「EV化」の潮流が一服し、トヨタが得意とするハイブリッド車が復権しつつあることも追い風になったのだろう。

 トヨタは中国での「本気度」を示すため、上海モーターショーで、新型車「bZ7」をお披露目した。全長5mを超えるセダンタイプのBEV(バッテリー電気自動車)で、1年以内の販売開始を目指すとしている。

トヨタが上海ショーで世界初披露したbZ7
トヨタが上海ショーで世界初披露したbZ7

 だが、私は客観的に見ていて、やはりトヨタは、空飛ぶクルマを並べた中国メーカー各社に比べて、見劣りした。中国の自動車市場はまもなく、日本の10倍規模となる。そんな世界一の市場でトヨタが本気なら、なぜ中国メーカーと同様に、空飛ぶクルマを前面に出さないのだろう?

 トヨタが空飛ぶクルマの時代を見据えていないかと言えば、まったくそんなことはない。「トヨタイムズ」(2024年12月16日付)では、「空飛ぶクルマ、日本初飛行! “誰でも乗れる”未来を目指して」と題して、36分にもおよぶ映像を公開している。

 そこでは、こう語られている。

「トヨタの空への挑戦は、約100年前から続いている。トヨタグループ創始者である豊田佐吉は、現在の価値にして100億円以上の懸賞金をかけ、『飛行機に載せて、太平洋をひとっとび』できる蓄電池の開発を推奨していた。

 トヨタ創業者の豊田喜一郎は、自動車の量産と並行して航空機の研究にも着手。豊田章一郎名誉会長は、米国企業と共同で、世界初となる電子制御のエアロ・ピストン・エンジンの開発を進めた。

 トヨタの歴史に脈々と受け継がれる、空のモビリティへの夢。目指すのは世界に先駆けて飛ばす実績ではなく、一般の人たちが乗ることのできる未来。Mobility for All、多くの人に移動の自由を届けたい。4代続く夢の当事者として豊田会長はそう語り、志同じくするビバートCEOと未来をつくる決意を改めて示した」

 ここまでトヨタが空飛ぶクルマに「本気」なら、なぜこれを中国市場にぶつける意欲を見せないのか? 中国語には「向前看」(シアンチエンカン=前を向いて進む)という言葉がある。トヨタが空飛ぶクルマの開発で世界最先端を行き、中国人の度肝を抜いたなら、「トランプ関税」への懸念など吹っ飛んでしまうだろう。

PR:かんたん5分! 自動車保険を今すぐ見積もり ≫

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

JMS2025に出なかった大物たちの行方は?最新の注目車対決10番勝負『ベストカー12.26号発売!』

JMS2025に出なかった大物たちの行方は?最新の注目車対決10番勝負『ベストカー12.26号発売!』

ベストカー12.26号 価格590円 (税込み)  あの「ジャパンモビリティショー2025…