トヨタ、日産などのメーカーが開発する“基礎技術”に注目 今年伸びるのは?

 EVや自動運転技術は、自動車界のみならず世間の注目を大きく集めている。2017年はこれらの“未来技術”が伸びる1年になるのか? 

 技術に詳しい自動車評論家、鈴木直也氏の見解は予想外のものだった。

 文:鈴木直也
ベストカー2017年1月26日号


日産のEV戦略も計画目標とは遠い現状

 短期的な技術予想というのは、いっけんすると外れないようにみえる。

 なにせ、すでに自動車メーカーなどがロードマップを発表しているケースが多いんだから「アウディがレベル3自動運転車を2018年までに発売する」って発表すれば、こちらは「なるほど、そうですか」としかいいようがない。

 ところが、こういう「思惑」はしばしば外れるんだよね。

 自動車メーカーのロードマップというのは、基本的に自分たちが「かくありたい」という願望だから、外部の諸条件によってはそう都合よくいかないってこともある。

 最近の典型例が日産のEV戦略だった。カルロス・ゴーン氏の約束どおりなら、リーフをはじめとする日産のEVはいまでは年間10万台ほど売れてるはずなんだけど、現実は発売以来6年かかってやっと累計20万台を達成した程度。

 リーフがデビューした2010年末には、ぼくも尻馬に乗って「来年はEV元年! 電気自動車の時代が来る!」とかはしゃいでたけど、正直いまだにそんな実感はない。

ノートe-POWERのオフライン式に立ち会うゴーン氏。もちろん、EVが今後成長していくことに疑いはないが、少なくとも現状では当初の計画どおりの“成長”を実現できていないのも事実だ  

 しかも日産は電池戦略も思いっきり方針変更で、電池製造子会社のオートモーティブエナジーサプライの売却を決定。

 「バッテリーを制する者がEV市場を制する」という戦略も、どうやら幻想だった模様だ。EVみたいにまったく新しいジャンルの製品は、やっぱりどっちへ転ぶかわからないというのが現実なのだ。

 もちろん、長期的に見ればクルマの電動化というのは不可避な流れなんだけど、数年くらいのスパンではいろいろ紆余曲折があるってことです。

 だから、ピカピカに脚光を浴びてる夢の新技術にはちょっと眉にツバをつけて聞くようにしたほうがいい。

自動運転にも課題。グーグルも完全自動運転車開発を断念

 いま最もホットな「自動運転」だって、技術的な問題以上に社会的なコンセンサスの形成が難しい課題として残る。

 ユーチューブにはテスラを筆頭にいろんなベンチャー企業の自動運転ムービーが上げられているけど、乱暴なことを言えば、あれは「たまたま上手く走れた」だけ。過剰な期待をかけてはダメ。

(テスラモデルSの自動運転動画)

 実際の路上では突発的な危機が発生する可能性が無限にあり、それはどれひとつ同じものがない。

 それに対して、常にパーフェクトに対処するのは人間でも機械でもムリ。自動運転AI(人工知能)が人間以上に上手に対処できる場合もあり、判断をミスって人間ならまず間違えないエラーをすることもある。

 どっちが事故る確率が少ないか? そこに自動運転に対する期待感がある。

 しかし、避けられない事故が発生した場合、これが問題。人間のミスならありふれた事故として処理されるけど、自動運転AIが原因で事故が発生した場合は、誰がどう責任を取るのかというルールは定まっていない。

 というか、ルールを決めていてもいざ実際に事故が発生したら責任の所在について必ず揉めるだろう。

 折しもこの原稿を書いているさなか、グーグルが完全自動運転車の開発から降りることが明らかになった。自動運転車開発の最先端にいるグーグルの判断は、業界関係者に大きな衝撃として伝わっている模様。

 2017年は、まず「夢のナントカカントカ」的な未来技術が、夢から覚めて現実に直面する年になるんじゃないかと思います。

 その反動で、やっぱり自動車関連産業の基礎技術力はすごいぜ!! といった感じで、既存技術の再評価が進むのではないでしょうか?

2017年“基礎技術”を磨いたメーカーが伸びる

 2016年はトヨタのTNGAやスバルのSGPなど、新世代プラットフォームの実力が世に知られた年だったが、エンジンやパワートレーンだってサボッてるわけではない。

新型インプレッサに初搭載されたスバル・グローバル・プラットフォーム。分かりやすい先進技術ばかりに目がいきがちだが、クルマの基礎となる技術も地道な進化を遂げている  

 12月にトヨタが新世代パワートレーンの技術発表をやったけど、もはや熱効率40%は当たりまえ、ミッションだってFFで8速、FRは10速、ハイブリッドシステムも副変速機付の新世代が用意されていた。

 技術的なトレンドは、高圧縮比、4-2-1エキゾーストなど、マツダがやってきたSKYACTIVに近いものがあったけど、打ち込みバルブシートをやめて異種金属をレーザーで溶着する「レーザークラッドバルブシート」など、トヨタでなくちゃ量産化できないハイテクも満載。

 少なくとも、トヨタはまだまだ内燃機関の改良を徹底的にやるつもりだな、という「ホンキ度」はビシビシ伝わってきた。

 逆にいえばトヨタがホンキである以上、ライバルメーカーもきちんとしたプラットフォームやパワートレーンの革新をやっていかないとヤバイってこと。

 欧州ではまだ例のVWディーゼル問題がくすぶっていて、その打開策としてパリショーではVWをはじめとした各メーカーの「EVシフト」が話題になったけど、

 今後10年以内に既存の自動車メーカーがEVで食っていけるようになるとは、ぼくにはとうてい思えない。

 地味だけど、クルマに関わる基礎技術をもう一度きちんとブラッシュアップしよう。2017年はそういうマジメなメーカーが伸びるような気がする。

こちらはトヨタが発表した新型のFR用10速AT。従来6速AT比で回転時のクラッチの損出トルクを約50%低減しているという。新型LSにもこの10速ATが搭載される  

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