今後も日産はゴーン体制の踏襲が基本
10億円を超えた巨額の役員報酬は、株主からの批判を避けるためにも多少減額されるとみられるが、日産にかぎらず日本では外国人役員を厚遇する傾向があり、西川氏を下回ることはないだろう。
さらに、新たに三菱からの報酬も加われば減額分の補てんにもなる。
見方を変えると、今後、トランプ米大統領によるNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しや日本車批判などで影響を受けるリスクに対して西川氏の身に経営責任がより重く降りかかる以外は、この先も日産セレナに搭載された自動運転技術「プロパイロット」のように従来どおりの路線を“追随走行”することになるだろう。
しかも、西川氏は1953年11月生まれの63歳。1954年3月生まれのゴーン氏よりも5カ月ほど年上であり、“賞味期限切れ”寸前と揶揄されたゴーン政権を若返らせる組織改革とは逆行する。
「ゴーン社長退任」発表後、日産の株価が反落してさえなかったのも投資家の間では失望感のほうが先行したからだろう。
ゴーン氏にとって三菱復活は“覇権への野望”を果たすラストチャンス
では、ゴーン氏はなぜ、このタイミングで日産の社長兼CEOを退くことを決断したのか。
まさかのトランプ米大統領の就任でこの先風当たりが強まるとの見方も考えられる。
日産はメキシコで年80万台以上生産し、米国にも輸出しており、トランプ政権の通商政策の見直し次第では大きな痛手となる。
ゴーン氏自身は「引き続き日産の会長として、またルノー・日産・三菱自のアライアンスの枠組みのなかで監督・指導する」とコメントした。
だが、直接リスクを問われる社長兼CEOにしがみつくよりも、影響力を保持しつつ大所高所からグループを統括するトップリーダーとして、将来の合併・統合を視野に入れながら3社の連携をより強化する道を選んだ。晩節を汚さないためにも賢い選択をしたとも受け止められる。
その背景には、傘下に収めた三菱自の存在が大きい。
燃費不正で経営不振に陥ったとはいえ、三菱自を支える三菱グループ首脳の「金曜会」には日本経済を動かす有力企業29社が加盟している。
その圧倒的な「財閥パワー」を目の当たりにして、三菱自の再建に並々ならぬ意欲を示すのは、執念を燃やし続ける「覇権への野望」を成し遂げる最後のチャンスとみて大勝負に出たからだ。
この先、日産の販売台数や利益率などの「現状維持」とともに三菱自の「完全復活」こそが、世界制覇のカギを握ることになるだろう。
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