R35をまるまる飲み込んだR32
そしたら案の定というべきか、出たよVR38DETT。マサカとは思っていたけど、R35の心臓が鎮座ましましてる。いやー、これね、実物見るまではちょっと信じ難いですよ。
そんな簡単に直6からV6にスワップできるわけねぇと思って、取材対応をしてくれたトップシークレットの中荒井さんに「でも、ストラットタワーの板金加工とか必要なんでしょ?」と水を向けると、「いや、エンジンだけなら意外とすんなり入ります」と事もなげ。
そういえば、ボンネッット内はほとんど「量産車か?」と見まがうほどスッキリ整理されていて、インタークーラーもR35純正が「まるで最初からそこにあったかのように」バンパー裏におさまってる。
もちろん、これはトップシークレットのプロフェッショナリズムの成せる技なんだけれど、じつに見事な仕上がりなのだ。
しかし、本当にこのクルマの改造スキルがすごいのは、ここから先だ。
中荒井さんの「エンジンだけなら意外にカンタン」という言葉の裏には、「でもパワートレーンをそっくり移植しようと思ったらタイヘンよ」という含みがあるはずだ。
デフとミッションを一体化してリアにマウントする”トランスアクスル”はR35の技術的なキモ。
だから、このトランスアクスルと4WDシステム抜きにエンジンだけ換装しても、そりゃもはやGT-Rじゃなくて単にパワフルなだけのクルマ。ぜんぜん面白くない。
このあたりのメカニズムは、クルマをリフトに載せて下から見るしかないんだけど、正直いって「エンジンよりこっちの方が大変だったのでは?」と思わせる大工事だ。
基本的にはR35のリアサブフレームを移植して、そこにトランスアクスルやサスペンションを組みつけてるのだが、本来R32にはそんな部品が入るスペースはどこにもない。
結果として、リアシート下の床を大切開して新しいフロアパネルを造り、そこにパーツを取り付けることになる。
結果的に後席は撤去されて2シーター化。ついでに、新設したリアフロアにはトランスアクスルが見える窓を開けて透明パネルをはめ込んで遊んでる。
フェラーリをはじめリアウインドーからエンジンが見える演出は珍しくないけど、トランスアクスルを見せる演出は世界初だろうね、たぶん。
チューナーの”こだわり”が生んだ1台
ここまでやるだけでも、気が遠くなるほどの手間とコストがかかってるハズなんだけど、ボスの永田和彦さん(通称:スモーキー永田氏)の凝り性はとどまることを知らない。
「パワートレーンがR35なんだから、電子制御システムはもちろん、ナビやエアコンなどの快適装備もR35レベルにしないとダメでしょ? そもそも、ただのショーカーじゃなくてナンバー取って公道を走るつもりなんだし」
この鬼のような自身への要求には恐れいった。この結果が、先に書いた「ドアを開けたらR35のインパネ…」というサプライズにつながるわけだけど、これもメチャメチャ手間とコストがかかる大仕事。
ここまでやると、もはやまったく新しいコンプリートカーを1台仕立てるのと変わらないんじゃないかと思う。
ちなみに、中荒井さんは「いくらかかったかと言えば5000万円くらいにはなるのでしょうが、だからといって5000万円でもう一台造ってくれと言われてもぜったい断りますね」だそうである。
それにしても、このR35の心臓を持ったR32である「VR32 GT-R」。ひさびさに夢のある改造車に出会えたって感動しました。今年のオートサロンでチューニングカー部門最優秀賞に輝いた理由がよくわかる。
今回は足回りの仕様変更中だったため試乗はできなかったが、次回、チャンスがあったらぜひコイツを公道で試乗させてもらいたいものであります。
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