国交省が明かす地下化の実現性
正式に日本橋直上の首都高地下化方針が決まるまででこの紆余曲折ぶり。ならば、「本当に地下化なんて実現できるのか?」が気になるところ。
そもそも、今回の発表まで、日本橋周辺の首都高都心環状線は、今使っている老朽化した高架橋を架け替える計画で進められていた。
【資料】は2014年に発表された首都高の更新計画で、竹橋〜江戸橋区間(日本橋区間)も大規模更新箇所に指定されている。
「地下化が本当に実現できるか? そうですね、該当区間の地下には地下鉄路線も数多く走っていますが、技術的にできないことではないです」
「費用はどうなるか? 従来の更新計画では1412億円かかる見積もりでした。はっきりとは言えませんが、(地下化すると)数千億円はかかる想定です」
国交省道路局経済調査室の担当者は、このように説明する。
技術的に地下化は可能!! では完成時期は?
では、専門家の見解はどうだろうか? 高速道路研究家の清水草一氏に聞いた。
「地下化は技術的には可能。おそらく日本橋川の地下ではなく、川の両側の道路の地下にトンネルを作ることになるだろう」
日本橋川の地下にトンネルを掘るとなると、相当な深さになる。そうなると江戸橋ジャンクションまで地下化する必要が生じ、かなりハードルが高くなるというのだ。
いっぽうで、両側の道路の地下であれば、それほど深く掘る必要もなく実現性が高いというのだ。これは2006年の小泉元首相の音頭で結成された『日本橋川に空を取り戻す会』で提案された案とも一致する。
「それでも費用が5000〜6000億円程度かかるのはほぼ間違いなく、それでいて地下化による渋滞緩和などのメリットがあるわけではない」
「ただし、地下化にもメリットはある。従来の内回りと外回りを別々に架け替える計画では、工事中片側1車線通行となり、激しい渋滞が起きるのは避けられない。いっぽう、地下化なら供用中の路線から数日で地下トンネルに移行できる」
では、完成までにどれくらいの期間がかかるのだろうか? どうやら道のりはそう簡単なものではなさそうだ。
「川の両側の地下にトンネルを作るなら、立ち退きが必要な人もでてくる。数年後に計画内容が決まるとして、完成は最短で12年後、下手すると20年かかるだろう」
冒頭で首都高関係者が「最初の一歩」と言っていた意味がようやく身に染みてきた。清水氏は最後に、こうつぶやいた。
「日本橋の景観と言うけれど、私は首都高の景観にこそ価値があると思っているんだけどね」
1964年に日本橋の上に首都高が完成して以後、日本橋は空を失った。でも、その新しい景色こそ、海外にはない、日本の景観なのかもしれない。
ーー空を失った日本橋は、どちらの景色を望んでいるだろうか。
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