『120kgの軽量化』。
その衝撃的なインパクトをもって、新型スイフトが発売されたのは2016年12月。いまから約半年前のことだ。思えば2014年12月に発売されたアルトも先代比60kgの軽量化を実現してデビューした。この軽量化幅は、他メーカーと比べてもちょっと異例。
なぜ、スズキだけがこれほどの軽量化を実現できるのか? そして、軽量化のネックはないのか?
文:ベストカーWEB編集部/写真:編集部
スイフトは1クラス下のライバルより軽い!!
「スズキさんは凄い」(国産メーカー開発者談)
他の自動車メーカーからこんなふうに言われるほど、スズキの軽量化は圧倒的だ。では、実際に数値的にどれくらい凄いのか?
例えば、スイフトの車重は870kg。同クラスのライバル車の車重(各最軽量グレード)は、それぞれフィット、ノートが1030kg、デミオが1020kg、アクアが1060kgといった具合。
車重はボディの大きさに比例する。スイフトはフィット、ノートなどより少し全長が短い。それを考慮しても150kg以上の差は驚異的。
しかも、スイフトはパッソ(910kg)、マーチ(940kg)など1クラス小型な車より軽いのだがら、いかに飛び抜けているかがわかるというもの。ルノー・トゥインゴなど輸入車の同クラスモデルよりも圧倒的に軽い。
『衝突安全のスバル』に対して『軽さのスズキ』
「プラットフォームの更新などで得た技術的なゲイン(=利得)を、軽さに使うのか、衝突安全に使うのか、ということだろう」
「スズキの場合は、そのゲインの多くを軽さに使っている。いっぽう、衝突安全性能に多く使っているのがスバル」
このように分析するのは、メカニズムに詳しい自動車評論家の鈴木直也氏だ。そして、スズキがライバル車に対して大幅に軽いのは、メーカーとしての考え方や事情も絡んでいるからだという。
「スズキのメインマーケットはインドなどの新興国市場で、いっぽうスバルのメインマーケットはアメリカ。多くの国産メーカーはスバル同様、先進国市場を重視しなくてはならない」
「先進国では『衝突安全試験で五つ星を獲りました』ということに意味があるけれど、新興国では『軽くて燃費がいい』ことのほうにより意味がある」
『最新の技術で得たものを軽さにつぎ込む』。スズキ流のコンセプトが、他社にはない軽さを実現した背景にあるといえるだろう。
「スイフトの車重は870kgで、初代インサイトの850kg。アルミボディで作られた2シータークーペと遜色ない軽さを、一般的な5ドアハッチバックで実現しているところにスイフトと最近の軽量化技術の凄さを感じる」
次軽量化による“ネガ”はないのか?
鈴木氏が指摘するとおり、ここ20年間の軽量化技術の進化は凄まじい。高級車なら、カーボンを多用するなどコストをかけた軽量化もできる。それを軽自動車のアルトや大衆車のスイフトで実現できる点こそ、技術発展の凄さを物語っている。
ただし、気になる点もある。『軽さ重視のコンセプト』だとすれば、犠牲になっているものはないのか? ということだ。前出の鈴木氏は、スイフトに乗って予想外の驚きを持ったという。
「普通、軽さを優先すると、ボディがペナペナに感じたり、遮音性がイマイチになりがち。でも、スイフトに乗ると、軽さによる悪影響を驚くほど感じない。ライバルのデミオなどと比べても遜色ないレベル」
「現行型のスイフトは、今年のカー・オブ・ザ・イヤーに推せる1台だね。軽さを重視したスズキ、骨太なスバルと、さまざまなコンセプトがあることはとてもいいこと」
“最新の技術を最大限軽さに振る”。その思い切りのよさは、他のメーカーには決して真似できない、スズキ独自のコンセプトなのだ。
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