■100万円以下のクルマを作れ!
テリー 三菱自動車らしいクルマとは何ですか?
加藤 答えは出ていないのですが、やるべき一番の課題は他社に先行していたPHEVやEVの技術を生かした環境負荷の少ないクルマの開発。2番目にダカールラリーやWRCを戦った経験があるわけですから、走りの楽しさを磨くことも大事だと思っています。
テリー 三菱自動車らしさを考えることは大事ですが、今三菱自動車にとって一番重要なことは、売れるクルマ作りですよね。テレビ屋にとって一番重要なのは視聴率です。クルマも同じで、いいクルマよりも売れるクルマが正義になるはずです。加藤さんの口から、なかなか言えないと思いますが……。
加藤 テリーさん、何か秘策をお持ちですか?
テリー 素人なりに考えてきました。技術やコストといったことはわかりませんが、売れるということに特化した戦略として3つ提案させてください。まずは、「圧倒的に安いクルマを作る」ことです。
「三菱自動車らしいクルマ作り」と言った時点で、技術者に力が入り、いいものはできても値段も上がり、売れないというスパイラルに入ってしまいます。最近は軽自動車で200万円オーバーも珍しくありませんが、高いですよ。
加藤さん、軽自動車なら1台ギリギリいくらで売れますか?
加藤 ほんとに何にも付いていない簡素なものならなんとか100万円くらいでできるかもしれません!?
テリー 高い!(笑) 88万円くらいで何とかしてください。それはムリにしても三菱自動車のクルマは安い! とお客さんに思わせることが、売れるための一番の近道です。2番目にお願いしたいのは、「愛らしいクルマを作る」ことです。
最近の三菱車はどれもシャープな顔立ちの「ダイナミックシールド」になりました。SUVの力強さを強調するデザインですが、もう少し気を抜いたデザインのクルマがあってもいいと思います。
■表情の愛らしいクルマも作ってほしい!
加藤 テリーさんにはデリカD:5をベースにeyeキュートを作っていただきました。
テリー 社内から逆風が吹くなか、やらせていただきました。やさしい顔のデリカD:5があったっていいじゃないかと思ったんですが、イメージが狂うという意見が多く、担当者が“しかめ面”されたようです(笑)。
加藤 そんなことはないでしょう!?
テリー 少しやりすぎたかもしれませんが、見るものをホッとさせる表情を作りたかったのです。他社の軽自動車のデザインは、スズキのハスラーやラパン、ダイハツのムーヴキャンバスやミラトコットのように、愛らしいクルマがあり、人気となっています。今の時代、いいクルマ、よくないクルマで選ぶ時代ではなく、好きなクルマ、嫌いなクルマで選ぶ時代になっています。逆に言えば好かれるようにならないと売れません。
加藤 デザインにお詳しいテリーさんらしいご意見、ありがとうございます。実は私の父は絵の教師をしておりまして、小さいころから日展によく連れていかれました。その影響でしょうか、私もデザインには興味があり、クルマもデザインはとても重要だと思っております。
■ランサーやパジェロの名前を復活させろ!
テリー 3つ目になりますが、日産がフェアレディZを発表し、ホンダは初代シビックのオマージュともいえる、ホンダeを発売し、話題になっています。
たくさん売れるクルマではありませんが、社内のムードを変え、新しい風を起こす可能性があります。そういった意味でパジェロやギャラン、ランサーといったビッグネームを復活させてもいい気がします。
加藤 もちろん、それに似合う性能を持ったクルマが開発できれば、やる価値はあるだろうと思います。
テリー 最後に抱負をお聞かせください。
加藤 テリーさんとこうしてお話しできて私も刺激になりました。まず、今は状況を改善して社員を明るくしたい。社員が明るくなれば、元気なクルマ、明るいクルマが生まれるはずで、今回いただいたテリーさんの貴重なご意見も参考にさせていただきたいと思います。
テリー 三菱自動車の社内はもちろん、社外からの期待も大きいかと思いますが、私のような自動車ファンが「最近のミツビシいいね!」と話題に上る日が早く来るといいですね。今回お話しさせていただいて、加藤さんなら大丈夫、心強いと感じました。ありがとうございました。
コメント
コメントの使い方