三菱自動車加藤隆雄CEO×テリー伊藤スペシャルインタビュー 変われ! 三菱自動車

 昨年6月に三菱自動車CEOに就任した加藤隆雄氏を三菱自動車愛にあふれるテリー伊藤が直撃インタビュー。テリーの大胆な提案に加藤CEOはどう答えたのだろうか?

文/ベストカー編集部、写真/西尾タクト


■三菱が大好きだから、直球トーク

三菱自動車CEOに就任した加藤隆雄氏とテリー伊藤がエクリプスクロスの前でポーズ!

 私、テリー伊藤はバカのつくくらいのクルマ好きで、なかでも三菱自動車の応援団長を自認してきた。パジェロに乗り、パジェロミニを愛し、ランエボワゴンで走りを謳歌した。三菱自動車のクルマは、力強くて逞しいが、同時にやさしくもあった。

 三菱自動車のクルマに乗り、ドアを閉めると、ほっとする瞬間が広がる。内装がどうの、居住性がどうの、ということではなく、「お疲れ様!」と言ってくれるようだった。

 今回加藤隆雄CEOとは初めてお会いするが、自腹で三菱車を買った回数と金額はおそらく加藤さんよりも多いはずだ。テリーが言わずに誰が言う! 失礼を承知で三菱自動車を元気にする提案をぶつけてみた。

加藤隆雄氏profile

[かとう・たかお] 1962年三重県生まれ。1984年京都大学工学部物理工学科卒業後、三菱自動車に入社し、名古屋製作所(現在の岡崎製作所)に配属、一貫して生産畑、プレスの分野を歩む。

 2010年PSAとのロシア合弁工場に出向、2014年名古屋製作所の副所長を経て、2015年にインドネシアの生産合弁会社MMKI(ミツビシ・モーターズ・クラマ・ユダ・インドネシア)の社長。2019年6月から三菱自動車CEO。

 妻と一男一女の4人家族。趣味はゴルフで現在の愛車はアウトランダーPHEV。

■岡崎製作所勤務が長く2019年6月からCEOに

テリー伊藤(以下テリー) 加藤さん、お忙しいところお時間いただきありがとうございます。いきなりプライベートなお話で恐縮ですが、岡崎製作所勤務が長いとお聞きします。昨年CEOになられましたが、現在は単身赴任ですか?

加藤隆雄CEO(以下加藤・敬称略) いえ、実は娘と2人でこちら(東京)に住んでいます。たまに一緒に食事に行きますと若い彼女を連れているなんて思われまして(笑)……。

テリー 最高じゃないですか! でもうれしいですよね、娘さんが一緒に住みたいと言ってくれるのは。それと、自宅に誰か待っていてくれる人がいると、やっぱり違いますから。ところで、加藤さんはどうして三菱自動車に入社されたのですか?

加藤 ええ、あまり大きな理由はないのですが、たまたまいとこが三菱自動車の販売会社に連れて行ってくれ、クルマはいいな! と思ったことと、私が入社したのは1984年でしたが、当時の三菱自動車は3番目くらいで、トップを狙ってやりがいもありそうだなと思ったことの2つが、理由だったかもしれません

テリー 昨年、益子修さんから引き継ぐ形でCEOになられたわけですが、現在の三菱自動車の状況をどうご覧になっていますか? コロナ禍という状況はあるにせよ2020年度の最終赤字は3600億円と厳しい数字になっています。

加藤 「危機」だと認識しています。まずやらなければならないことは構造改革です。パジェロ製造を閉鎖することを決定し、希望退職者を募るなど、痛みを伴う改革を決断しました。

 その一方で、ASEAN諸国へ経営資源を集中させることでなんとか現状を好転させられたらと思います。そのうえで三菱自動車らしいクルマ作りをすすめ、お客様の信頼を勝ち取り、販売台数を伸ばしていかなければなりません。

■100万円以下のクルマを作れ!

テリー伊藤流の売れるクルマについて語る

テリー 三菱自動車らしいクルマとは何ですか?

加藤 答えは出ていないのですが、やるべき一番の課題は他社に先行していたPHEVやEVの技術を生かした環境負荷の少ないクルマの開発。2番目にダカールラリーやWRCを戦った経験があるわけですから、走りの楽しさを磨くことも大事だと思っています。

テリー 三菱自動車らしさを考えることは大事ですが、今三菱自動車にとって一番重要なことは、売れるクルマ作りですよね。テレビ屋にとって一番重要なのは視聴率です。クルマも同じで、いいクルマよりも売れるクルマが正義になるはずです。加藤さんの口から、なかなか言えないと思いますが……。

加藤 テリーさん、何か秘策をお持ちですか?

テリー 素人なりに考えてきました。技術やコストといったことはわかりませんが、売れるということに特化した戦略として3つ提案させてください。まずは、「圧倒的に安いクルマを作る」ことです。

「三菱自動車らしいクルマ作り」と言った時点で、技術者に力が入り、いいものはできても値段も上がり、売れないというスパイラルに入ってしまいます。最近は軽自動車で200万円オーバーも珍しくありませんが、高いですよ。

 加藤さん、軽自動車なら1台ギリギリいくらで売れますか?

加藤 ほんとに何にも付いていない簡素なものならなんとか100万円くらいでできるかもしれません!?

テリー 高い!(笑) 88万円くらいで何とかしてください。それはムリにしても三菱自動車のクルマは安い! とお客さんに思わせることが、売れるための一番の近道です。2番目にお願いしたいのは、「愛らしいクルマを作る」ことです。

 最近の三菱車はどれもシャープな顔立ちの「ダイナミックシールド」になりました。SUVの力強さを強調するデザインですが、もう少し気を抜いたデザインのクルマがあってもいいと思います。

■表情の愛らしいクルマも作ってほしい!

テリーさんがプロデュースしたデリカD:5をベースにしたeyeキュート。丸目の癒やし顔も必要だと訴えた

加藤 テリーさんにはデリカD:5をベースにeyeキュートを作っていただきました。

テリー 社内から逆風が吹くなか、やらせていただきました。やさしい顔のデリカD:5があったっていいじゃないかと思ったんですが、イメージが狂うという意見が多く、担当者が“しかめ面”されたようです(笑)。

加藤 そんなことはないでしょう!?

テリー 少しやりすぎたかもしれませんが、見るものをホッとさせる表情を作りたかったのです。他社の軽自動車のデザインは、スズキのハスラーやラパン、ダイハツのムーヴキャンバスやミラトコットのように、愛らしいクルマがあり、人気となっています。今の時代、いいクルマ、よくないクルマで選ぶ時代ではなく、好きなクルマ、嫌いなクルマで選ぶ時代になっています。逆に言えば好かれるようにならないと売れません。

加藤 デザインにお詳しいテリーさんらしいご意見、ありがとうございます。実は私の父は絵の教師をしておりまして、小さいころから日展によく連れていかれました。その影響でしょうか、私もデザインには興味があり、クルマもデザインはとても重要だと思っております。

■ランサーやパジェロの名前を復活させろ!

パジェロなどのビッグネームの復活が望まれる

テリー 3つ目になりますが、日産がフェアレディZを発表し、ホンダは初代シビックのオマージュともいえる、ホンダeを発売し、話題になっています。

 たくさん売れるクルマではありませんが、社内のムードを変え、新しい風を起こす可能性があります。そういった意味でパジェロやギャラン、ランサーといったビッグネームを復活させてもいい気がします。

加藤 もちろん、それに似合う性能を持ったクルマが開発できれば、やる価値はあるだろうと思います。

テリー 最後に抱負をお聞かせください。

加藤 テリーさんとこうしてお話しできて私も刺激になりました。まず、今は状況を改善して社員を明るくしたい。社員が明るくなれば、元気なクルマ、明るいクルマが生まれるはずで、今回いただいたテリーさんの貴重なご意見も参考にさせていただきたいと思います。

テリー 三菱自動車の社内はもちろん、社外からの期待も大きいかと思いますが、私のような自動車ファンが「最近のミツビシいいね!」と話題に上る日が早く来るといいですね。今回お話しさせていただいて、加藤さんなら大丈夫、心強いと感じました。ありがとうございました。

■加藤CEOの決意「元気なクルマ作りをすすめ、必ず危機を脱します!」

 三菱自動車の復活はそう簡単なことじゃない。「三菱自動車はいいクルマを作ってきたと思うが、結果的には売れていない」という事実に三菱自動車自身が正面から向き合わなければならない。

 加藤CEOはそのことをわかったうえで、これから舵取りをするはずだ。社員もクルマも明るく! という言葉が今回のインタビューで一番印象に残った。期待しよう!

■三菱自動車加藤隆雄CEO×テリー伊藤対談動画