■なぜ安くて走って楽しいあのクルマが選ばれなかったのか
レクサスLCは価格が1300万円以上だ。日本の1世帯当たりの平均所得金額が約550万円であることを踏まえても、1300万円以上のLCは非現実的だろう。
CX-5はSUVとして優れた商品だが、先代型に比べると変化の度合いが小さい。先代型から予想した通りの発展を遂げて、想定の範囲内に小さく収まり、意外性が乏しい。
そうなると国内市場向けに開発された軽自動車で、居住性やシートアレンジを充実させ、3ナンバー車と同等の安全装備を身に付けたホンダのN-BOXに10点を投じた。
2位はスズキ・スイフトで7点とした。これも海外で売りながら日本も意識した5ナンバー車で、軽量化を徹底させ、複数のハイブリッドや1.4Lターボ(スイフトスポーツ)などパワーユニットが豊富だ。
ちなみにベストカーWeb編集部では、スイフトがカー・オブ・ザ・イヤーを受賞すると考えていたらしい。それなのにイヤーカーに選ばれなかった理由は2つある。
まずは全般的に雰囲気が地味で、従来型からの変化が乏しく感じられたこと。マイルド/ストロングハイブリッドの違いも分かりにくい。優れた商品だが、選考委員の間でも一般受けはしなかった。
2つ目の理由は投票の方法だ。選考委員には25点の持ち点が与えられ、1車に10点を投じて残りの15点を4車に振り分ける。
そして1位のボルボXC60は294点を獲得したが、10点を投じた選考委員は9名だ。スイフトは4位で210点だったが、11名が10点を投じている。
つまり各選考委員は最も高く評価した車種に10点を投じるが、この顔ぶれはさまざまだ。
しかし2位、3位になると、多くの選考委員がボルボXC60を挙げる。60名の選考委員の内、ボルボを0点としたのはわずか6名だ(スイフトの0点は26名)。
■「1位に」という人は少なくても選ばれる仕組み
ボルボXC60は安全装備を充実させ、XC90やV90などに比べると、ボディがひとまわり小さい。強いていえばだが、日本市場にも多少は適する。
安全装備は世界の手本になるほど先進的で、一脈日本のスバルに通じるところもある。最大排気量を2Lに抑えたエンジンとプラットフォーム開発は、かつての日本風というか琴線に触れるところがあり、自ら退路を断った2L以下の判断も潔くてちょっとカッコイイ。
だから多くの選考委員が10点は入れなくても、2〜7点くらいは配点した(私も輸入車の代表として5点を投じた)。それが寄せ集まると204点になり、10点を投じた9名の90点を加えて合計294点になったわけだ。
こういった現象は人気投票では常識的に発生し、私も編集者時代に読者投票などで経験している。もう20年以上も前の話だが、日本車の投票ではトヨタマーク2が頻繁に1位になった。
投票する人の1位はソアラやスカイライン、ロードスターなどだが、2〜3番目に必ずマークIIが入り、集計では総合1位を取ってしまった。
そしてボルボXC60も、そういう輸入車なのだと思う。「とにかくクルマが大好き」という人だけでなく、「長距離を安全に移動するための道具が欲しい」、「内装の雰囲気が明るいクルマに乗りたい」、「外観が偉そうに見えない蹴散らし感覚のない高級車が好き」などなど、高価格車の範囲内ではあっても、いろいろなニーズに対応できる。
従ってボルボXC60は、日本車に「大したクルマがない」今年のイヤーカーにピッタリ。2位も輸入車のBMW5シリーズだから、本当に「日本車はどうなっているのか」と思う。
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