無資格者完成検査問題の後始末と責任は

■国土交通省にも当然責任はある 文:渡辺陽一郎

 2017年9月に、日産で完成車の検査を無資格者が行っていたと発表。10月にはスバルの制度不備も明らかになった。

 いずれも完成検査を偽装する意図はなく、検査自体は滞りなく行われていたが、正規の検査資格を持たない者が印章の貸与を受けるなどして業務を進めていた。商品に問題がなくても検査方法に不正があった。

 さらに遡ると2016年4月に、三菱が燃費計測を行う時の走行抵抗値に不正があったと発表した。

 この時は燃費を実際よりも優れた数値に見せる意図があり、悪意が伴った。同年5月には、燃費偽装の意図はないものの、スズキも国土交通省が定めるのとは違う方法で走行抵抗を計測していたことを発表している。

 以上の不正の責任は、いずれも自動車メーカー側にあるとして謝罪しているが、(国交省はいっさい謝罪も釈明もしておらず)「国交省の責任はどうなるのか」という疑問も生じる。

 なぜならメーカーの完成検査については「型式指定を受けた自動車は、国が行う新規検査に代えて、自動車製作者等が行う」としているからだ。

 燃費計測についてもJC08モード燃費は「国土交通省審査値」だから、審査を行うのはメーカーではなく国交省だ。

■「メーカーのために便宜を図っている」?

 新聞等の報道によれば、一連の問題に関して、国交相などが「非常に問題」と述べている。問題とする理由は「国のチェックをメーカーが代行する際の性善説が裏切られた」というものだ。

 しかし国民や消費者の常識では、受け取り方が違うだろう。本来は国交省が行うべき検査や計測をメーカーが代行して、そこに問題が生じたのであれば、国交省にも責任がおよぶと考えるのが妥当であるからだ。

 国交省に取材すると、完成検査に関しては次のような返答であった。

「本来はメーカーが国の施設に車両を持ち込み、完成検査を受けることになっている。しかし生産台数が膨大だから、すべてを持ち込んで検査を受ける方法は現実的ではない。そこでメーカーが自社で完成車の検査を行えるようにした」という。

 つまり「国交省がメーカーのために便宜を図っている」というわけだが、同時に国交省の省力化にもなっているだろう。双方の利便性のために、メーカーが国交省の完成検査を代行しているのだから、責任も双方に生じる。

 国交省は一連の問題を受けて、メーカーのデータ測定時の抜き打ちチェックを行うなど、2016年から技術的な検証を開始した。2017年6月には改正道路運送車両法が施行されて、虚偽の報告をした時の罰則も強化している。

 それでも先般の完成検査問題では、日産は過去約40年、スバルも30年以上にわたり、問題にされた方法で検査を行ってきたことが明らかになった。

 国交省はメーカーに検査を代行させながら、誤った方法を長期間にわたり放置してきたことになってしまう。

 国交省は、車両に型式を与えることから完成検査まで、すべての業務を監督する立場にあるから、メーカーの業務をチェックしなければならない。

 そこに手落ちがあったのだから、責任は国交省とメーカーが連帯して負うべきで、今後は国交省によるチェック体制の見直しも求められる。

 また完成検査問題では、不正な方法とはいえ長期間にわたり安全が確保されてきた経緯もあるから、検査方法を見直す余地も生じているだろう。

■クルマや社会の進化に「制度」が追いついていない

 燃費計測における走行抵抗の算出にも、複数の意見がある。国交省が定めるのは惰行法と呼ばれるギアをニュートラルに入れた状態で車両を走らせる方法だが、あるメーカーの開発者は、

「今の車両開発では、さまざまな抵抗を計測する。これをベースに走行抵抗を算出したほうが、風の影響などを受けずバラツキも少ない。正確性が高まるから、海外では個別に計測した抵抗値を使うこともある」

 という。

自動車自体はもちろん、検査の仕組みも変わっているのに、制度は古いまま
自動車自体はもちろん、検査の仕組みも変わっているのに、制度は古いまま

 車両やその開発/実験方法は急速に進歩しているのに、国の制度は前述のとおり30~40年も変更を受けていない。内容によっては、戦後の自動車産業が発足した約70年前から使われているものもある。

 道路交通法も含めて、旧態依然とした制度を今日の自動車技術とクルマ社会に合った内容に是正していくことが大切だ。

 何よりもまず開発現場で働く人たちの意見を聞いて、公平でムダのない制度を確立させる必要がある。

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