2021年1月8日、日本自動車工業会の豊田章男会長がオンラインで年頭挨拶動画を公開した。コロナ禍で戦う医療従事者や自動車関連産業に従事する550万人に向けて感謝を伝えるとともに、感染症拡大にともない「移動の自由」が制限されている中で、あらためて自動車関連産業の団結を促し、カーボンフリー社会に向けた取り組みにも言及する内容だった。
文/ベストカーWeb編集部
■日本経済の土台を支える自動車産業
今回は「トヨタ自動車代表取締役社長」という立場ではなく、「自動車工業会会長」として年頭挨拶オンライン動画を発表した豊田章男氏。依然拡大を続けるコロナ禍のなかで、人々の「移動の自由」が大幅に制限された。動画は、そうした状況下でも奮闘を続ける医療従事者と自動車関連産業従事者550万人に、まずは「感謝」を伝える内容から始まった。
豊田会長のオンライン挨拶のほかにも、自工会による特製動画も放映。整備工場やディーラー、運送業など各ジャンルの声と姿を紹介しつつ、「新しい日常とは、立ち止まることじゃない。新しいやり方で道を進んでいくということだ」というフレーズが印象的だった。
また「2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会を目指す」という政府の目標についてもあらためて言及(これは年末(2020年12月17日)に実施したオンライン懇談会で、多くのメディアで豊田会長のコメントが「電動化への懸念」と紹介されたことに対する一手だと考えられる)。
豊田会長は「(菅義偉総理と日本政府の「脱炭素社会への目標設定」に対して)敬意を表するとともに、全力でチャレンジしていく」と明言。この「脱炭素社会に向けた取り組み」とは、単純に、【すべてのクルマを純ガソリン車から電動車(EVやPHVやHV)へ切り替えていく】という話ではない、と強調。「クルマが走るときに出る二酸化炭素」だけでなく、自動車を生産するときに出る二酸化炭素、燃料や動力を生むさいに出る二酸化炭素、公共交通機関を回し、物流を支えるさいに出る二酸化炭素をどう減らしてゆくか、そうした総合的な取り組みに挑戦していく、という意図を説明した。
「変革の準備はできております。今こそ550万人の力をひとつにする時だと思います。」と語る。
また、自動車産業の経済効果についても言及。
自動車関連産業が持つ巨大な雇用、納税額、そして経済波及効果について語り、「自動車が【1】の価値を生み出せば、それは社会全体にとって【2.5】の価値となる」と説明した。
コロナ禍の拡大により、経済不安が広がっている。大手シンクタンクの予測では、2020 年度の実質GDP成長率は前年比-5%台なかばの大幅なマイナス成長となり、2021 年度はその揺り戻しで+3%台前半の回復を見込むが、コロナ前の水準を回復するのは 2023 年以降となる見通しだ。
そうした状況下で、巨大な雇用と強い経済波及効果を持つ自動車産業は、日本経済の土台を支える役割を期待されている。まさに渦中の存在だといえる自工会豊田会長は、「深刻になるのではなく真剣に」と語った。
2021年は東京オリンピック開催とともに、秋には東京モーターショーも控えている(オンライン方式での開催も含めて検討中)。未曽有の世界的な危機に際し、自動車産業が果たす役割は依然大きい。ますます舵取りが難しくなってゆくなかで、(自工会だけでなく)ひとりひとりがどのような力を発揮できるのか。地道な一歩を積み重ねる重要性を、あらためて促す内容であった。
コメント
コメントの使い方