メルセデスベンツの“直6”が約20年ぶりに復活! 2018年3月1日、Sクラスに追加されるS450が発表。直列6気筒エンジンを搭載していることで注目を集めており、次期型スープラにも直6が搭載確実だ。
かつて、6気筒エンジンのなかで主流だった直列6気筒は、V型6気筒エンジン以上のスムースさが持ち味で、今なおそのフィーリングを愛するファンは多い。
なぜ、一度は淘汰された直6が今、ふたたび注目を浴びるのか。そして国産車に蘇る日は来るのか?
文:永田恵一
写真:編集部、Daimler、NISSAN、TOYOTA
ベンツの“直6”が今、復活した理由

まず、ベンツの新しい直6エンジンの特徴、大きなキーワードは「電動化」である。具体的にはエアコンやウォーターポンプなどの電動化により補器の駆動ベルトが不要となり(この点は後述する小型化にも貢献)、特に欧州車では今や当たり前となった過給機もターボに加え、電動式のスーパーチャージャーも備える。
さらにS450はIGSと呼ばれる小型モーター(約22馬力、25.5kgm)と約1kWhのリチウムイオン電池から構成される比較的簡易なハイブリッドとなっている
S450日本仕様の燃費はまだ公表されていないが、ハイブリッド化による燃費の向上に加え、モーターのアシストと電動スーパーチャージャーの装着で、特に低速域ではV8エンジンを思わせるような太いトルク感を実現していると思われる。
続いて、「今直6エンジンを復活させた理由」を考えてみよう。まず、大前提にあるのが、補器駆動のためのベルトが不要になったことなどによる技術の進歩で、直6エンジンが、従来のV6と同等の全長で作れるようになったというブレイクスルーだ。
直6エンジンが短く作れるのなら、V6エンジンのコンパクトさという強みは薄れ、にわかに直6エンジンのメリットが光ってくる。
いくつかメリットを挙げてみると、直6は6つの排気管から出る熱で排ガスをクリーンにするための触媒が暖められ、触媒を素早く活性化しやすい。
それに対し、V6は3気筒×2となる排気系それぞれに触媒が必要となるため触媒の暖気の早さが重要となる排ガスのクリーン化で不利となる。
また、V6エンジンは吸排気関係やタービンに代表される過給機関係の部品の取り回しも複雑になりがちで、その点も直6エンジンが有利だ。さらに、部品点数が少ない直6の生産コストは、V6より安く済む。
その上で最近は「もう直6もV6も変わらない」というのが大方の結論となっている。
そうなると、完全バランスと呼ばれる直6の一層スムースなフィーリングは堪らないメリットと言えよう。
かつて6気筒の主流だった直6エンジンの歴史

日本車の直6エンジンの歴史の99%はトヨタと日産の直6エンジンの歴史だ。
トヨタの「M型」エンジンは、1965年に2代目クラウンへ追加(2L、直6)という形でデビューし、1992年頃まで生産され、最終的に3Lツインカムターボまで進化した。
また「G型」は、1990年代初めまで日本での需要が大変多かった2Lの排気量に特化し、1980年の初代クレスタに搭載されて以来2008年まで生産された。
そして「JZ型」は、M型の後継エンジンとして1990年のX80型マークII三兄弟と初代スープラのマイナーチェンジでデビュー(2.5L)し、翌1991年に3Lが加わり、それぞれにNAとターボがあった。
いっぽう、日産の直6エンジンは、「L型」が1965年登場のセドリックに2Lが初搭載されて以来、最終的には輸出仕様の2代目フェアレディZで2.8L、OHCターボまで進化。
そして、1969年登場のハコスカGT-R以来ケンメリGT-R、初代フェアレディZ432に使われたレーシングベースエンジンの「S型」もあった。
さらに、1984年の5代目ローレルの2L、OHCでデビューしたL型の後継エンジン、「RB型」は、数々の改良が行われ、2004年頃まで生産された。RB型といえば、R32から34のスカイラインGT-Rに搭載された未だに光り輝くエンジンだ。