「最も小さなオイルメーカー」を自負する理由
そもそもエンジンオイルは、ベースとなる鉱物油や合成油にポリマーやエステルなど様々な添加材をブレンドすることで完成されるもの。そのレシピを考えるのが、和光ケミカルなどオイルメーカーの仕事だ。
膨大な製造量を誇る大手メーカーを除き、中小オイルメーカーのほとんどは、半製品化された材料をブレンドすることでオイルを仕上げているのが一般的だ。
しかし、和光ケミカルでは、大手同様に原材料から入手し、細やかな配合を決定している。これが「最も小さなオイルメーカー」を自負する理由だ。
規模は違えど、大手同様に完全オリジナル配合のオイルを世に送り出している。そんな拘りの製品づくりは、開発製造コストも決して安くはない。
それを実現できるのは、「ワコーズらしさを追求せよ」という社長の想いから。なんと社内で唯一予算制限が設けられていないという。
この体制が可能なのも、バブル期もリーマンショック期も、成長率は一定のコツコツ経営が支えている。創業以来、本社を大都市に移転することもなく、経済産業省が選定する「地域未来牽引企業」に選ばれるなど地域に根差した経営を続ける。一言でいえば、実に真面目な会社なのだ。
現在、研究開発部の設備は、規模は小さくとも大手同様の高価な試験機が揃えられているが、これも毎年コツコツと買い揃えてきたもの。
さらに2007年には、ハイエースに様々な計測器を搭載した「モバイルラボ」を投入。これによりレース現場でよりリアルなデータの収集と解析にも取り組んでいる。これらのモータースポーツで得られた技術は、全て製品へフィードバックされている。
“不器用さ”から漂う旧き良きモノづくりの薫り
最後に「ワコーズ」のオイルの推奨交換時期を尋ねてみた。すると意外なことに「推奨はない」という。
その理由を、取材に応じてくれた和光ケミカル技術部の南口広宣氏は、こう説明してくれた。
「オイルの劣化は汚れなどではなく、固まること。現在のオイルが劣化するのは稀。それよりも水分や未燃焼のガソリンなどが混入することでオイルの一番大切な粘度の変化にある。オイル交換は、ごみを取り除くこと。その適正なタイミングは車ごとに異なるので、推奨はない」
絶対、ユーザーに嘘を付かない、そんな真摯な姿勢が多くの車のプロたちに支持されているのだろう。
今回の取材を経て、筆者のワコーズのイメージは大きく変わった。良いものを作っているなら、量販店でガンガン売ればいいのに、それは決してしない。
ともすれば不器用な姿勢からは、失われつつある旧き良きモノづくりの姿勢を感じた。
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