車好きなら一度は耳にしたことある「WAKO’S(ワコーズ)」。
エンジンオイルなどの油脂類やメンテナンス用などのケミカルを揃える「和光ケミカル」のブランド名だが、その知名度とは裏腹に、何故か量販店などではあまり商品を見かけないという謎のブランドである。
自動車用オイルといえば、カストロールやモービル等、メジャー石油会社のブランドが思い浮かぶ。
いっぽうで、和光ケミカルは自らを「最も小さいオイルメーカー」と表現する。その開発現場に赴くと、そこには旧き良きモノづくりの薫りが漂っていた。
文・写真/大音安弘
本社は地方都市! 商品は量販店に置いてない?
和光ケミカルは、1972年の創業以来、神奈川県小田原市に拠点を置くオイルとケミカルの総合メーカーだ。
創業当初は、オイルなどを取り扱う商社としてスタートしているが、当初よりメーカーとなることを目標とし、早くから研究開発部を設立。会社経営が軌道に乗ると自社製品の開発に着手した。
オイルなどを自社開発していると聞くと、大きな企業を連想させるが、総従業員数は550名程度の中小企業。
しかも、その多くは全国各地で活躍する営業マンたちであり、研究開発部門の人員は、その1割ほどというから、驚く。生産自体も、外部に委託している本当に小さなメーカーなのだ。
では、規模が小さいから商品を目にする機会が少ないかといえば、さにあらず。ワコーズの取り扱いの中心は、全国各地のディーラーやプロショップなど整備のプロたちの現場なのだ。
馴染みのプロショップなどでワコーズ用品が満載された専用ラックを見たことがある方もいるだろう。それは商品の特徴を理解した自動車のプロを通して、ユーザーに使って欲しいという想いからなのだ。
「日本のバイクは日本のオイルで走らせたい」
その開発の舞台は、モータースポーツ。創業40周年となる2016年からは、日本一に挑みたいという夢に挑み国内最高峰レースであるスーパーGT GT500クラスに「レクサス チームルマン ワコーズ」として参戦している。
実は、ワコーズとレースの結びつきは深い。その始まりはワコーズのある開発者が、バイクレースを観戦した際、日本のバイクが速いのに、オイルは全て海外メーカーで占められている現状を変え、日本のバイクは日本のオイルで走らせたいという夢を持ったことがきっかけだという。
そこから、2輪向けにモータースポーツ向けのオイルの開発に着手する。ワコーズが特徴的だったのは、自社の最適なオイルではなく、チーム(ユーザー)が望むスペックのオイルを供給したことだ。
もちろん、オイルにとって過酷な環境下に置かれるレースだけに、様々な困難をひとつひとつ乗り越え、大小様々なレースチームに供給。
それらのバイクが高成績を収めるようになり、その評判は口コミで広まり、それが4輪レースへの足掛かりに。やがて完全オリジナルの市販エンジンオイルへと結び付いた。
一般ユーザーの認知度が高まってきたのも、ちょうどこの頃で、そのきっかけが現在もラインアップされるエンジンオイルの「プロステージS」。もちろん、当時のものとは異なり、幾度も改良を加え、より優れたものに進化している。
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