■グローバル化が進むなか「日本ユーザーのために」作られている
クラウンは2017年(暦年)に2万9085台が登録され、1か月当たりの平均登録台数は約2400台。スイフト、シャトル、アクセラなどと同等になる。
それ以外の上級セダンは全般的に苦戦している。クラウンのライバル車は日産セドリック&グロリアの後継となるフーガだが、こちらは発売から8年を経てサッパリ売れない。1か月の登録台数は150台前後だ。
スカイラインも240台程度にとどまる。スカイラインはフロントグリルに海外で展開する高級車ブランド「インフィニティ」のエンブレムを装着しており、「もはや日本で売る気はない」とも受け取られる。
カムリは2017年にフルモデルチェンジを受けたから設計が比較的新しく、ハイブリッド専用車でもあるから1か月に2180台程度を売るが、それでもクラウンにはおよばない。
クラウンが高価格セダンなのに好調に売れる理由は、まず日本のユーザーのために開発しているからだ。
■初代からずっと変えていないスタンス
トヨタはクラウンの初代モデルを1955年に発売した。この時点から海外で売ることを考えており、今では中国でもマジェスタをベースにしたクラウンが販売されるが、一番重視しているのはあくまでも日本のユーザーだ。
クラウンは初代モデルから上質な内外装をセールスポイントにしてきたが、その基準は日本のユーザーが抱く高級感にある。ここがトヨタが展開するレクサスを含むほかのLサイズセダンとは違うところだ。
また現行型のボディサイズは全長4800mmを超えて長いが、全幅は1800mmに抑えている。これも日本の道路や駐車場の環境に配慮しているからだ。
そして日本のユーザーのために開発されたクルマは、「高級感がセンスに合っている」とか、「ボディサイズが適度」といった理屈を超えて、ユーザーの気持ちに強く訴えてくる。一種のオーラのようなもので「これは自分のために造ってくれたクルマだな」と実感させる。だからこそ売れるのだ。同じようなことが軽自動車やミニバンにも当てはまる。
これに比べてクラウン以外のLサイズセダンは、すべて海外向けに開発された。これらの売れ行きが伸び悩む理由も同じで、日本のユーザーを見ていないからだ。「日本でも売ってあげます」という意図が見え隠れすれば、日本のユーザーが敬遠するのは当然だ。全幅が1800mmを大幅に超えるといった指摘も間違いではないが、それ以上の本質的な販売不振の理由として、日本のユーザーと真剣に向き合っていないことが挙げられる。
見方を変えると、日本のユーザーと真剣に向き合い、日本のユーザーが何を求めているかを考えて開発すれば、カテゴリーを問わず売れる可能性がある。
■ユーザーや地域に寄り添い続ける販売店の力
そして歴代のクラウンが愛され続け、売れ行きを伸ばしたもうひとつの理由は、トヨタ店の専売車種として、力を入れて販売していることだ。
入念な顧客サービスを含めて、クラウンのユーザーをしっかりと繋ぎ止めている。背景には粗利の多い車種という理由もあるが、看板車種としてクラウンとそのユーザーを大切にしてきたことが大きい。
ほかのメーカーは、2010年頃までに全店が全車を扱う体制に移行した。そうなると販売会社としての車種に対する愛着も、平均化されてしまう。日産であれば効率良く販売できるノートやセレナに力を入れて、スカイラインやフーガは後まわしになる。前述のようにメーカーがセダンを開発する姿勢も海外重視だから、販売会社とセールスマンも売る気を持ちにくい。
ホンダも同様で、N-BOX、フリード、フィットなどに力が入る。必然的にレジェンドは売れず、2017年の販売総数は400台少々で、1か月平均にすれば40台に満たない。クラウンの2%程度にとどまる。
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