2017年10月、実に11年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたレクサス LS。これだけ時間をかけたのだから、さぞかし凄い車になっているのだろうと誰もが期待したものだが、なかなか高い評価が聞こえてこない。正直に言って、手放しで褒める人を見たことがない印象だ。
編集担当も街なかを走らせてみたが、フラッグシップセダンとは思えないチープな振動が常にあり、「う~ん……」と思ったものだ。
【表】にあるとおり国内の販売は好調だが、今後もこの勢いが続くかどうかは未知数。それより何より、レクサスのなかでも最高級車のLSが、欧州プレミアムカーに対抗できないのは日本人として悔しい。LSのどこに問題があるのか。2名の自動車ジャーナリストが厳しく批評する。
文:鈴木直也、西川淳
写真:ベストカー編集部
ベストカー 2018年6月26日号
「乗り心地の質が今イチだったのが残念」
レクサス LCから導入された“GA-L”と呼ばれる新プラットフォーム。LCに試乗した際、これがかなり「イイ感じ」だった。
従来のトヨタ車にありがちだったタイヤの位置決めがユルイ感覚がなくなり、サスペンションが正確かつソリッドにストロークしている気持ちよさがある。
スポーティカーらしく基本的には硬めの足なのだけれど、強固なボディと相まってそれが少しも不快ではない。「ようやくレクサスもひと皮むけたなぁ」と、大いに感心したわけです。
当然、そのセダンバージョンであるLSへの期待も大きく盛り上がったのだが、どうしたことか、LCで感じたピシッと一本芯の通った精密感が感じられず、むしろ細かい路面のアンジュレーションでバネ下がブルブルする、あのトヨタの持病がぶり返している。
GA-Lプラットフォームは、フロントが上下ともダブルジョイント式マルチリンク、リアもマルチリンク。アーム、ナックル、サブフレームなどの足回りパーツはすべてアルミ鍛造/鋳造という贅沢な構成。
おそらく、アウディやBMWなどと比べても、ほぼ同等のコストを投入しているように見える。つまり、トヨタとしてはドイツ御三家に本気で勝負を挑む意欲作であることは間違いない。
それだけに、LSの乗り心地のクォリティがイマイチだったのは残念。LCでハンドリング側に振ったポテンシャルを乗り心地のほうに活かせば、すばらしくスムーズで上質な乗り心地フィールが実現できると予想していただけに、正直「どうしちゃったの?」というのが実感。本来のポテンシャルが発揮されていないように思えてならない。
乗り心地のチューンはとってもデリケートだから、ブッシュやダンパーのわずかな変更でガラッと乗り味が変わることも多々ある。ここは是非、早急な改善をお願いしたいところでございます。
■ここは褒めたい
LSが一番攻めてるのは、インテリアの造形と品質感の表現。ビジネス的には、ドイツ的品質感を表現しておけば無難なんだろうが、それじゃいつまで経ってもレクサス独自の世界観は築けない。
象徴的なクリスタルガラスを使ったドアトリムはさておき、ドイツ御三家とは違ったテイストを表現しようというその意気やよし。ぼくは応援したいと思っています。
【鈴木直也】
「ハイブリッドの出来に不満」
イマイチどころか“イマサン”ばかり目立ちますが、特に問題なのはハイブリッドパワートレーンのデキが悪いこと。
レクサス=ハイブリッドでいいくらいなのに、肝心のシステムが、ラグジュアリーサルーンには不向き、というか、向いたセッティングになっていません。
LCならよくても、静かに&滑らかに走りたいLSには、明らかに見合ってない。低速域から不可解なトルク変動が不用意にあって、気持ちよく運転できない。妙な音もいっぱい聞こえてくるし。
かといって、ガソリンターボがいいかというと、全然ダメ。ヤンキーのように下品にはしゃぐ向きにはいいかもしれないけれど、高級車用の最新ガソリンエンジンとしてはがさつで滑らかさに欠ける。フィールにも高級感はまるで感じられません。
あと、高速道路での巡航が下手というのも辛い。とにかく、ドライバーがリラックスした状態で車線をキープして走ることができない。自らちょろちょろズレてはレーンキーピングアシストに叱られるのはボク。挙げ句のはてに「休憩しろ」、と。オレのせいとちゃうやん!
LCもよく似たものでしたが、よりお金のかかっているはずのLSのほうが、気持ちよくなかった。
LCなら目をつぶれても、LSでは我慢ならないのかもしれません。ホイールベースの長いサルーンなのですから。ひょっとすると、LCもLSも街中専用なのかもしれませんね。GT(=グランドツーリングカー)ではないんだ、と。そんな使い方をするオーナーは日本にいない、と。
使い勝手の悪いインフォテイメント系も大問題です。そろそろ、操作系の考え方を100%変えたほうがいい。もっとシンプルに、使いやすい方法がほかにもまだあるはずです。
内装の見映えや「Fスポーツ」のクローム処理の不徹底さなど、ほかにも文句をいいたいところは山ほどあります。静粛性を含め、むしろ昔のレクサスが得意としていたところだったはず。ホント、どうしちゃったんでしょうね〜。
■ここは褒めたい
カタログがよかった。ホントにそのとおりの車だったなら、言うことなかった(笑)。
それはさておき、マッサージ機能は車として最高の部類です。あと、エクステリアのデザインで思い切り挑戦できた点。
走りまでそれに引っ張られて収拾がつかなくなってしまったのが悔やまれますが。仕上げクォリティも相変わらず高レベル。サイドウィンドウもツライチになったし、ボディ表面の仕上げもいまだ一級品と言っていいでしょう。
【西川淳】
◆ ◆ ◆
厳しい指摘もあるが、それはレクサスに対する期待の高さゆえ。メルセデスベンツやBMWといった世界の高級車に対して、ニッポンの高級車として真っ向から勝負を挑んでいるのはレクサスだけだ。
フラッグシップモデルのLSの進化は、今後レクサスが名実ともに世界の高級車に成長するための命運を握っている。
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