いよいよ自動車関連諸税が現状のままなのか、それとも下がるのか、瀬戸際になってきた。
自工会の豊田章男会長は、二期目にあたる今期就任以来ずっとこの自動車関連諸税の減税をアピールしており、「消費税が10%になる2019年10月の前に、自動車関連諸税をせめて世界標準なみに減税しないと、国内新車市場は壊滅的なダメージを受ける」と主張してきた(本記事メイン写真)。
そんななか、もうすぐ(実質的な来年度の税制案となる)与党税制改正大綱が発表される。
2018年10月には「経済産業省案」が、さらに12月7日には「与党方針」、ふたつの自動車税減税案が報道された。
はたして減税は叶うのか? 叶わないのか? そもそも論で考えると、報道された「与党案」でも高すぎる、と主張する、自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏に、そもそも自動車関連諸税がなんでこんなに高いのか、から話を聞いた。
文:渡辺陽一郎
■約半世紀前の制度がほぼ手付かずで残っている
日本の自動車ユーザーから徴収する税金(いわゆる自動車関連諸税)は、1970年代の初頭までに創設された。
この時代は自動車の普及期で、道路建設も活発に行われた。
1970年における自動車(2輪車も含む)の保有台数は1653万台で、2017年の8126万台に比べると大幅に少ない。比率に換算すれば20%だ。
しかも乗用車に限ると、1970年の保有台数は、2017年のわずか12%にとどまる。
1966年にはトヨタカローラと日産サニーが発売され、「マイカー元年」と呼ばれたが、実際にマイカーを持てる人達は少なかった。
その理由は自動車の価格だ。1966年に発売された初代カローラデラックスの価格(東京地区)は49万5000円で、平均大卒初任給(1966年は月額2万4900円)を基準に今の価値に換算すると、約408万円に達する。
つまり「初代カローラは大衆車」などと呼ばれながら、今の感覚でいえば、エアロパーツを備えたアルファード&ヴェルファイアとか、ハリアーハイブリッドに準じるクルマだった。そうなると自動車は贅沢品とされ、所有する家庭も富裕層が中心だった。
また当時は、クルマに限らず洋服や果物の物価も、所得の割に高額だった。子供を質素に育てるだけでも大変な時代だったから、乗用車の保有台数が今の12%でも当然であった。
■「金持ちが道楽で持つものだから税負担せよ」なら理屈はわかるが…
そこで自動車は、富裕層が所有する贅沢品として、各種の税金を徴収する対象になった。購入時に納める自動車取得税、購入時を含めて車検を受ける時に納める自動車重量税、燃料に含まれるガソリン税や軽油取引税は、すべて道路建設を目的とする「道路特定財源」として創設された。
自動車のユーザーは、道路から高い恩恵を得ているので、道路の建設費用も負担すべきという考え方に基づく。従って前述の税金は、基本的には道路の建設や管理のために使われた(不適切な使われ方も指摘されている)。
ところがこの道路特定財源制度は、2009年に廃止された。同時に税金を成立させる法的根拠も失ったが、いまだに徴税が続き、一般財源(使い道を限定しない普通の税金)として使われている。
つまり自動車を所有したり、走るための燃料を買うだけで、理由もなく多額の税金を負担させられるわけだ。
コメント
コメントの使い方