■生活必需品なのに、半分が税金に
特に燃料の課税は、税金が燃料価格に含まれるから、納税額が分かりにくい。
仮にレギュラーガソリンの小売価格が1L当たり150円とすれば、ガソリン税と石油税が56.6円含まれ、消費税の8%はこれらの税金にも課せられる(二重課税)。
その結果、67.71円が税金で占められ、レギュラーガソリン価格が150円でも本体価格はわずか82.29円だ。
約50%が税金として徴収されている。
タバコの税負担は価格の約60%、ビールは40〜50%だから、ガソリンは移動に不可欠の燃料なのに、税負担の割合は嗜好品なみに高い。本来ガソリンの本体価格は軽油よりも安いが、税金が高額なために小売価格では逆転している。
一部繰り返しになるが、公共の交通機関が未発達な地域では、自動車がないと実質的に生活できない。バスに乗るのと同じように自分の自動車を使わねばならないが、燃料価格には理由もなく高い税金が含まれ、重い経済的な負担を強いられている。
さらに悪いのは、初度登録(軽自動車は初度届け出)から13年を超えた車両について、自動車税/軽自動車税/自動車重量税を増額していることだ(ディーゼルの自動車税は11年超)。
近年では、公共交通機関が未発達な地域で、人口に占める65歳以上の高齢者比率が増えた。お年寄りが古い自動車で、通院や日常的な買い物をしている現実がある。そこから多額の税金を巻き上げるのが今の自動車税制だ。
高齢者の福祉に逆行して、地域の移動を危うくする制度になっている。
■保有台数が現在の0.4%だった頃から変わっていない
自動車税/軽自動車税も問題を抱える。
毎年納める税金で、排気量に応じて課税するが、課税の根拠は財産税だ。昔は自動車が高額な資産で、これを活用すると、より多くの利益を生み出せる。そこで排気量に応じて課税するようになった。
1958年までは、同様の理由で自転車や荷車も課税の対象になっていた。
自動車税の創設は1950年だから、自動車が普及を開始する前のことだ。1950年の自動車保有台数は34万台だから、2017年の0.4%であった。
自動車税/軽自動車税の仕組みは、基本的にこの時代から変わっていない。普通乗用車は税額が高額で、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)が3048mm/120インチを超えると税額を一層高めた時代もあったが、おおむね排気量に比例している。排気量が大きいほど高級になって自動車税額も高まる考え方だ。
自動車税/軽自動車税の矛盾は、財産税なのに、時間の経過に基づく資産価値の低下を考えていないことだ。そのために売却額が1万円とか、価格の付かない(資産価値のない)車両にも、コンパクトな1.3Lエンジン搭載車で年額3万4500円の自動車税が課せられる。
この矛盾を解消するために、減価償却の考え方に沿って、年を経るごとに自動車税を下げるべきだ。固定資産税も、資産評価額に基づいて課税される。自動車の税金だけが価値の低下を考慮せず、そればかりか13年を超えると一層多額の税金を徴収するのだから、理屈にまったく合わない。しかも困っている人達をさらに苦しめている。
そこで与党は消費税の10%増税に伴う対策として、自動車税の減税案を与党税制改正大綱に盛り込むことになった、と報道されている。
一歩前進といえるが、減税額が足りない。
報道(2018年12月7日付け共同通信)によると、排気量1000cc以下の小型車は現行税額2万9500円だが、これを2万5000円に(-4500円)、以下排気量が大きくなるほど減税額は少なくなるという(下記表参照)。
経済産業省がまとめた自動車税の引下要望案が望ましい。経済産業省の案は、軽自動車税の1cc当たり年額16円(現在の年額1万800円÷660cc=16円)の比率を小型/普通車にも適用するものだ。
そこで現行型自動車税/与党案/経済産業省案を比べると以下のようになる。
与党案にも見るべきところはある。1000cc以下の減税額は4500円と多くしたことだ。排気量が大きくなるほど減税額が減る(税金が高くなる)累進課税の考え方に基づくから、自動車が日常生活のツールになった現実に合っている。
それでも経済産業省案とは税額の隔たりが大きい。与党税制改正大綱に盛り込む自動車税額は、さらに下げる必要がある。
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