■日本人の7割が賃金交渉をしない
「賃上げ要求(交渉)」をするかどうか、「する」として(雇用主と)個人でするか、組合を通してするかは、風土的、文化的な背景がある。
それにしても、「そもそも日本人は会社と賃金交渉をあまりしない」という調査結果がある。
リクルートワークス研究所が発表した「5カ国リレーション調査」(2020)によると、日本人の労働者のうち賃金について「要望する」が約3割で、「要望しない」もしくは「わからない」が約7割とのこと。そのいっぽうで海外(同調査ではアメリカ、フランス、デンマーク、中国)では「要望する」が約7割で、「要望しない」もしくは「わからない」が約3割とのこと。
日本人は、世界的に見て「賃金交渉したがらない国民」だということがわかる。人口が増え続け、産業が急成長し続ける社会であれば、それでもよかっただろうが、この21世紀、このままでいいのだろうか。
もちろん日本経済が低成長を続けていることには、さまざまな要因が関係している。しかし他国が成長を続けているなかで、日本だけ前に進めていない事情のひとつに「中間層の低賃金化」があり、さらにその要因のひとつに「賃金交渉の場に立てていない人たち」の存在が大きいのではないか。
マスメディアの中で、労働組合があって会社側と毎年しっかり賃金交渉する会社は少ない。おおむね賃金交渉についての関心が低い業界であり、そのいっぽうで年末が近づくたびに「春闘はどうなる」とか「ベアはあるのか」、「満額回答はこことこと」と報じるわけで、今回「その姿勢はどうなんだ」、「もっと目を向けるべきポイントがあるのではないか」と問われたわけでありました。
自工会としては「国内市場が盛り上がってもらわないと困る」という事情があるし、「そのためには中間層の所得がもうちょっと上がってもらわなくては困る」という背景があるのはよくわかる(かつてフォードが実践した「フォーディズム」は、自社製品(クルマ)が買えるくらい自社社員の給与を上げる、という思想だった)。
ざっくりまとめると、「自動車メーカーもがんばるから、マスコミ各社ももうちょっとがんばってよ」という大変耳の痛い話だと受け止めました。中間層の所得が減少すると困るのは、報道各社も同じなはず(もちろん当社も困ります!!)。日本経済全体の底上げのため、もっと幅広い視点で賃金上昇について調査し、報道するよう努めます。
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