■近年の合成燃料はe-fuel
しかし、最近になってふたたびFT合成が注目されるようになったのは「カーボン・ニュートラル」へのシナリオが描けるようになったからだ。ただし鍵を握るのは「水素」であるという点は忘れてはいけない。ここでは環境に優しい合成燃料「e-fuel」について説明する。
筆者は2014年に、アウディが取り組む「e-fuel」を現地で取材したことがある。視察した実験プラントはニーダーザクセン州にあるヴェルルテ(Werlte)という酪農の町。「e-fuel」生成のプロセスをもう少し述べると、まず再生可能なエネルギーから電気をつくり、電気分解で水素を生成する。その水素(この場合は「グリーン水素」と呼ぶ)を工場などで排出するCO2に合成し、メタンCH4を生成する。このようにCO2と水素を利活用できれば、エンジンは堂々と生き残ることができるのである。
このプロセスで合成されるメタンガスをアウディ「A3 g-tron」で走らせると、電気自動車やPHEVよりもCO2排出量は少なくなる。CO2が再び燃料となるのだから理想的なエネルギーのエコシステムが構築できる。F1やル・マンレースでは「2026年にe-fuelを使う」と発表しており、自動車メーカーも注目している。
現在はポルシェがこの技術を受け継ぎ、南米チリで合成燃料の開発生産に乗り出した。この地域では再生可能なエネルギーの切り札である風力で発電し、電気分解によって水素を作る。ドイツのシーメンス、アメリカのモービル・エクソンと連携し、水素を利活用するe-fuelの製造事業が始まっている。
■バイオマス燃料が普及するブラジル
2010年5月、カーニバルで知られるリオ・デジャネイロで、タイヤメーカーのミシュランの環境イベント「ミシュラン・チャレンジ・ビバンダム」が開催された。その取材のために日本から地球の裏側の地に向かった。ここブラジルでは自国のサトウキビを原料としたバイオエタノールにガソリンを混ぜたものが普及していた。
1970年代の石油ショックで大打撃を被ったブラジルは、自国の農産物で作るバイオマスを代替燃料とする国家のエネルギー政策を推進し、それがバイオエタノール車の普及につながっている。ガソリンで走る乗用車のほとんどは「FLEX FUEL」と呼ばれ、エタノールが利用できる。
市内のガソリンスタンドではガソリン燃料にエタノールを85%混ぜるE85、あるいは100%エタノール(E100)も市販されていた。ブラジル仕様のホンダ「シビック」を試乗したが、ガソリン給油口にはE100と書かれており、100%バイオエタノールの代替燃料を使う。しかし、低温時の始動用に0.7Lのガソリンタンクを装備していた。ホンダのブラジル仕様のシビックはCO2とNOxの排出量が少なく、環境に優しい。
2008年ごろにドイツではフォルクスワーゲンとダイムラー・ベンツが次世代バイオマスの有効な利用法を研究し、その成果を発表するワークショップを取材したことがあった。そこではBTL(Biomass to Liquids)という合成燃料をドイツ・フライブルク市にあるコーレン社(CHOREN)で開発し、廃材や食べられない植物などから人工的に液体燃料(商品名SUNディーゼル)を作ることに成功していた。このバイオマス・ディーゼル燃料は2008年のル・マン24時間レースに参戦したアウディのレースカーに使われていた。
コメント
コメントの使い方こんなトヨタお抱えメディアで一生懸命水素やエンジンの生き残りの妄想を書いても意味ないでしょ。なんでこんな極東の島国で一生懸命ありもしない水素の未来なんか語ってんの?水素なんか電気分解で作るくらいなら電気のまんま使いましょうよ。。
日本にもありましたよ戦後。木炭自動車と言って、木炭を不完全燃焼させてCOガス取り出し、シリンダ-に送り、燃焼させたあの木炭自動車。
名前は良いんですが、普及の大きな障害として高価格なのがあります。
例えばスーパー耐久での使用を大々的に謳っているマツダでも、レース全体での使用率はほんの2割ほど。残り8割は通常の燃料です。
高い、性能も劣る、大量確保も難しい、これらを早く解決しないと政治によりEV強制が決まってしまいますね。