クルマの合成燃料(e-Fuel)推進は「BEV化のハシゴ」を外したのか?【日本のクルマ界は生き残れるか? 第1回】

■代替燃料は国のエネルギー安全保障と関係

 ところかわって、アメリカではどんな政策が進められていたのだろうか。

 1993年、第42代アメリカ大統領に就任したクリントン政権は、「PNGVプログラム(パートナーシップ・ニュー・ジェネレーション・ビークル)」を立ち上げ「大人が4人乗れて70MPG(マイルパーガロン=約30km/L)の燃費で走れるクルマを次世代カーとする」というプログラムを策定した。冷戦後の軍事技術を応用し強いアメリカの自動車産業を復活させる国家プロジェクトであった。同時に石油の消費を抑える狙いもあった。

 続いて第43代大統領のジョージ・W・ブッシュ政権は「フリーダム・カー・イニシアティブ(Freedom CAR)」を設けて、水素燃料電池や水素エネルギーに関するインフラを整備する政策を推し進めていた。この政策の裏側には輸入石油に頼らない国家のエネルギー安全保障というシナリオも組み込まれていたと筆者は考えていた。そして第44代大統領のバラク・オバマ政権では、さらに環境問題にシフトするグリーンニューディールが登場した。

 日本はオイルショック以来、省エネ政策が進められ、自国のエネルギー自給率を上げるべく、原子力を推し進める国のエネルギー政策が主流だった。資源のない国の日本にとって、いつの時代もエネルギーは悩みのタネだったと思う。自動車大国のドイツも同じ課題を抱えており、自動車が誕生した100年も前から石油に頼らないエネルギーを研究していた。

 歴史を見ると、ガソリン自動車が普及するまでの短い期間に鉛バッテリーのEVが走っていたこともあった。20世紀は紛れもなく「石油の世紀」となり、機械工業が一気に進み、便利な社会が生まれたが、一方で富める者と富まざる者という格差も生まれた。

 石油は人類に何をもたらしたのだろうか、と考えているのは私だけではないだろう。

 最後に付け加えるなら、エンジンは大気中の空気を吸入するので、大気を浄化することも可能だ。BEV化のハシゴを外したのは誰であっても構わないし、重要なのは「BEV化」よりも「カーボンニュートラル化」であり、どのようなかたちで(移動のための)エネルギーを(時代の要請に従ってクリーンに)生み出すか、ということのはずだ。BEVも「e-fuel」も、石油から解放されるなら、歓迎すべきだと筆者は考えている。

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