販社統合で全店全車販売へ! 現場の声は?
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2019年3月下旬、都内販売店で今後の予定や見通しを尋ねた。
「改装は順次行うが、未経験の試みだから、今後の見通しが立たない。全店が全車を扱えば、ネッツ店は新たにクラウンを売り、トヨタ店にはパッソなどが加わる。従来以上に多くの商品知識が求められる。カタログも大量になる。
現状では点検などの工賃が系列ごとに異なり、新たに決めることも多い。ひとつの会社にするなら、金額も統一すべきだろう。残価設定ローンの残価率も系列ごとに違う。
そして、店舗の統合や廃止が進むと、新しいカーシェアリング事業などに乗り出しても、リストラは避けられないと思う。
その一方で店舗を単純に減らすと、サービス工場の規模も減り、車検などでお客様の車両を預かる期間が長引く。ショールームは減らせても、サービス工場は縮小しにくい。
そこで、複数の店舗をひとつの大型店舗にする方法もあるが、土地が必要なうえ、店舗の建設にも時間を要する」と言う。
販売会社の経営統合は可能でも、販売系列をひとつに絞るのは難しい。
また、東京以外はメーカーに頼らない地場資本の販売会社が多いから、1社に合併するのは困難だ。
それでも2022〜2025年には、全店が全車を扱う。そうなれば販売力の強い販売会社が生き残り、ほかは吸収されていく。
この将来的な動向は、かつて系列化されていた他メーカーを見ると予想できる。日産は2003年に約3100店舗を構えたが、今は2100店舗だ。ホンダも2400店舗から2200店舗に減った。
今後のトヨタの販売会社は各地域での競争が激しくなり、販売力の強い会社が生き残る。そのような地場資本は、トヨタの販売会社以外にも量販店など複数の事業を営むことが多く、カーシェアリングなどの試みにも柔軟に対応できる。
トヨタは生き残った確実に利益を上げられる強い地場資本と組むのだろう。今後のトヨタが求めるのは、販売会社の経営者ではなく、事業を幅広くダイナミックに展開できる資本家になる。
値引き競争も困難に? ユーザーメリットはあるのか
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問題はユーザーのメリットだ。新しい事業やサービスは楽しみだが、全店が全車を扱えば、東京に限らず店舗の削減が進む。不便を感じて、車種が減るのも寂しい。
東京のようにひとつの販売会社になると、購入時の値引き競争も難しい。
あるセールスマンは「今のトヨタでは、プリウスやC-HRのように、全店が扱う車種が増えた。そうなるとお客様は、異なる販売系列同士で値引きなどを競わせる。社内的には、トヨタ同士の値引き合戦を防ぐことも、統合の目的に含まれると思う」とコメントした。
カーシェアリングは、希望するユーザーに提供することは大切だが、積極的に推進すると車が公共の交通機関に近づく。
友達同士で1台の車をシェアするなら別だが、今のカーシェアリングは短時間でも使えるレンタカーと同じだ。知らない人が使うから、ルールを守っても「愛車」にはなり得ない。
ユーザーの「所有したい欲求」を満たすことも大切だ。洗車からドレスアップまで、クルマを巡る楽しさは所有から始まる。
顔見知りのセールスマンが入念なサービスを行い、車検も1日で終えるなど、今のトヨタ系ディーラーの顧客満足度はとても高い。
時代の変化に対応することは大切だが、昭和から続くトヨタディーラーのよさもある。少なくとも車検や整備など、安心と安全に関しては高い水準を維持してほしい。
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