ビッグモーター「違反360点で指定取り消し」のところ1万3,584点…なぜこんな事態が見逃され続けたのか

ビッグモーター「違反360点で指定取り消し」のところ1万3,584点…なぜこんな事態が見逃され続けたのか

 2023年10月13日、国土交通省は会見を開き、今夏ビッグモーター社の全国34事業場へ行った抜き打ち立ち入り検査の結果を発表、34事業場すべてで法令違反が見つかり、全事業場に事業の停止、うち12の事業場に指定工場の「指定取消」措置を実施する方針を発表した。

文/ベストカーWeb編集部、写真/AdobeStock@WATA3

■「まさかそこまではやらないだろう」に立脚した制度

「34の事業場すべてにおいて法令違反が確認され、そのうち12の事業場において指定工場に、最も重い処分である”指定取消”に相当する法令違反が認められたことは、きわめて遺憾だと考えています。」

 本日、国交省会見室で実施された記者会見で、斉藤鉄夫国土交通大臣は上記のように語った。民間車検場は、違反行為にともなう点数の合計が360点以上になると道路運送車両法に基づいて「指定取消」処分を受けるが、事務方の説明によると、今回法令違反が見つかったビッグモーター社の指定工場のうち、最も違反の多かった「ビッグモーター浜松南店」では、違反点数が1万3,584点にのぼったとのこと。なお同法には「社会的な影響が大きい場合、違反点数を2倍にできる」という特例があり、今回それが適用された。半分でも6,792点である。

 見つかった不正は、不当な点検や整備で費用を過大に請求していたり、必要な点検整備の一部を実施しないまま620台の乗用車の車検を合格にしていたり、整備や点検記録簿に虚偽記載があったなど。

 SNSでは「文字通り桁が違う」、「監督省庁は何を監督していたんや」、「現場はもう何が不正で何が不正じゃないか、判断できなかったんだろうな」などの声が上がっている。

 自動車整備工場は、自動車の「分解整備」を行う場合、地方運輸局長の「認証」を受ける必要がある(これを受けた工場を「認証工場」と呼ぶ)。この認証工場に車検を依頼した場合、工場は運輸支局、自動車検査登録事務所などへ車両を持ち込んで検査を受けることになる。

 その認証工場のうち、自動車の整備について一定の基準に適合する設備、技術および管理組織を有し、そのうえで自動車の検査設備を有し、かつ自動車検査員を選任して点検整備について検査させると認められる工場について、地方運輸局長は指定自動車整備事業の指定をしている(これを「指定工場」と呼ぶ)。

 指定工場は、車検の際に(決められた検査、整備、手続きを踏まえたうえで)運輸支局などへの車両の持ち込みを省略して車検を通すことができる。

 今回ビッグモーターが膨大な違反点数を積み上げるに至ったのは、ひとえにこの検査と管理体制を揺るがす事態といえる。「まさかそこまではやらないだろう」と、性善説で制度が組み立てられており、その隙間を突いたかたちとなった。

 そもそも今年7月に発覚した一連の「ビッグモーター騒動」は、日本の自動車産業では新型車の「生産」「検査」「流通」「販売」に関しては比較的厳しく管理され、チェック体制も充実しているのに対して(それでも何度か不正検査事件が起こるわけだが)、一度販売されたあとの中古車に関する「販売」や「検査」、「整備」については、いくらでもつけ入る隙があり、悪質な不正が可能であったことを明らかにした。

「命を載せる乗り物を売る」という点では、新型車も中古車も違いはない。今後は車検(とそれを管理する)体制に見直しが必要だという議論が起こるだろう。

 なおビッグモーターは全国で135カ所の工場があり、今回抜き打ち検査があった34工場すべてで不正が見つかったことを受けて、国交省は残りの101工場も不正が裏付けられれば処分する方針を打ち出している。今後、国交省は同社から意見を聞き、今月中にも(指定工場取消などの)処分を確定することになる。

 中古車売買と整備や車両保険に関して、「中古車購入にはご注意を」とユーザー側へ自衛を任せて、こうした歪んだ実情を長く見逃してきたマスメディア、自動車専門メディアにも責任があるわけで、その点、反省しております。

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