2019年6月24日、トヨタ自動車はプレスリリースを発表。
「全車種併売化の予定を、 (2018年11月時点では、2022年~25年を目途に行うとしていたが) 来春5月に前倒し致します。全国どの店舗でも、クルマや移動に関するあらゆるサービスを提供することで、お客様のニーズにさらに寄り添うサービスの早期実現を目指してまいります。」
として、約60年間続けてきた「販売店系列ごとに販売車種を変える手法」を終了する発表をした。以下、この(来春から実施される)「全国全店舗で全車種販売化」とはどういうことか、これにより何が起こるのかをざっくり整理してお届けしたい。
(※なお上記リリース内で「あらゆるサービスを提供」とは、トヨタがディーラー各店舗を「クルマを売る場所」だけでなく、今後「カーシェアリングサービスの起点」として運用してゆく狙いも見てとれる)
文:ベストカーWeb編集部
■全国全店舗で全車種販売…とは?
現在トヨタには「トヨタ店」、「トヨペット店」、「カローラ店」、「ネッツ店」の4種類の販売系列がある。
それぞれの系列はターゲット販売層が微妙に異なっており(「トヨタ店は富裕層で、ネッツ店は若者向け」等)、それに合わせて販売取扱車種も異なっていた(たとえばアルファードはトヨペット店、ヴェルファイアはネッツ店等)。
この販売系列店制度は1956年に「トヨペット店」が設立されてから現在までずっと(日本市場において)続けられており、同一地域に異なる販売系列店があっても(取り扱い車種が違うせいで)値引き競合などが起こりづらいかたちになっていた。
しかし近年、日本市場全体の新車販売台数が低下(1990年度比で約40%減)。これにともないトヨタも国内約60車種のモデルを約30車種まで段階的に減少させてゆくと発表。
こうした状況を鑑みて、販売系列ごとの取り扱い車種限定を廃止し、売れるクルマをより売れるように(収益の高いクルマを集中的に売れるように)すべく、全店舗全車種取り扱いに踏み切った。
この「全店舗全車種取り扱い」は、全国に先駆けて今年(2019年)4月より東京地区で先行開始。実施後まだ2カ月ながら各営業マンからは「売上が上がった」と評価は高い。
短期的には、「売れるクルマはより売れるようになる」ため収益は向上するだろうが、長期的に考えると売れていない店はより売れなくなるだろうから販売店ごとの競争が激化し、 販売店数は減少すると見込まれている。
また、日本の自動車文化の特色のひとつであった「兄弟車」も、今回の販売店取り扱い車種統合で、廃止に向かってゆくだろう。
もちろん、ユーザー側としては「自宅から一番近いトヨタ系列店ですべてのトヨタ車が買えるようになる」というメリットは大きく、そのことによる販売増は大きいだろう。
現在全国約6000店舗におよぶトヨタディーラーの多くは(トヨタ自動車の直轄店ではなく)地場産業であり、「全店舗全車種取り扱い」には抵抗が強いと考えられてきた。
だからこそ全車種取り扱い化には時間がかかると思われていたのだが、一転して前倒し実施。2020年春から、日本市場ではさらなる販売合戦が繰り広げられることになる。少なくともトヨタ系列では厳しい生き残り競争となるはずだ。
日本経済の地盤を支える産業だけに、今後の行方を注視したい。
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