■ブラックの新世代店舗
マツダは2014年度から、新世代店舗の整備を開始した。従来の店舗とは異なり、外観をレクサスのようなブラックで仕上げている。内装も落ち着いた雰囲気で、初期の新世代店舗は店内が薄暗い。ソウルレッドの展示車が美しく見えることを重視してデザインされ、プレミアムブランドの雰囲気にも合わせた。
ただしソウルレッドのボディが美しく見える代わりに、マシーングレーは沈んでしまう。また店内が暗いと、せっかく質感を高めた車内がほとんど見えない。クルマの購入商談では、休日に子供連れで販売店を訪れる顧客も多いが、店内が暗いと子供の様子も分かりにくい。
このような欠点があるためか、最近の新世代店舗は、以前に比べると内装が変化してきた。外観はブラックでも、店内の壁をベージュにして明るく見せたり、車両にスポットライトを当てている。
販売店からは「外から見るとマツダのディーラーだと分かりにくく、改装後は店舗の前を通り過ぎたお客様も多かった。メーカーが一定の基準を示したが、店内は販売店の判断も含めて改装している」という声が聞かれる。
■マツダ2/3/6の車名変更
日本国内で売られるマツダ車には、ほかのメーカーと同様、デミオ、アクセラ、アテンザといった車名が与えられていた。ところが海外は、欧州車と同じように数字で示されていた。
そしてアクセラが先ごろのフルモデルチェンジで、車名を海外と同じマツダ3に変更した。開発者に理由を尋ねると、
「マツダ3には新型エンジンのSKYACTIV-Xが搭載され、魂動デザインも従来とは違う新しい表現をしている。通常のフルモデルチェンジよりも変化が大きく、これを機会に車名を海外と共通化した。車名にメーカー名のマツダを冠することで、マツダ車であることを強調する意図もある。
そして欧州車を選ぶ時に『BMWを買う』とブランドで表現されるように、『マツダを買う』といわれたい」
と説明された。
意図は分かるが、この考え方に基づくなら、車名の変更は変化の大きなフルモデルチェンジに限られるだろう。しかし実際はマイナーチェンジでデミオがマツダ2に、アテンザはマツダ6に変更された。
これでは一般ユーザーは分かりにくい。フルモデルチェンジであれば「アクセラが生産を終えて、後継車種のマツダ3が新発売された」と受け取ることもできるが、マツダ2とマツダ6はマイナーチェンジだから宣伝もあまり行われない。デミオとアテンザの車名変更が伝わりにくい。
この経緯には、1990年前後に展開されたマツダの5系列販売体制を思い出す人もいるようだ。マツダ/フォード(オートラマ)/ユーノス/アンフィニ/オートザムの5系列を短期間で設け、大急ぎで膨大な姉妹車も開発した。
例えばミドルサイズなら、マツダクロノス/フォードテルスター/ユーノス500/アンフィニMS-8(セダン)&MS-6(5ドアハッチバック)/オートザムクレフという具合で、姉妹車を短い時間に整えている。
開発者、デザイナー、製造現場などに物凄い負担を掛けながら、ユーザーは「どこで買えば良いのか分からない」状態になり、マツダの国内販売は急降下した。1990年にマツダの国内販売は59万台に達したが、1991年には55万台、1992年には48万台と下がった。その後も下降を続け、2000年は31万台、2018年は前述の22万台少々だ。
マツダ2/3/6の車名変更と、かつての5系列販売体制はまったく異なるが(30年の歳月も流れている)、数字の羅列ということで関連性を感じてしまう。
販売店の反応はさまざまだ。「車名の変更は、噂には聞いていたが、本当にアクセラやデミオをやめるとは思わなかった。お客様からも変更の理由を尋ねられた」という意見がある。その一方で「車名の変更に大した意味はない。説明すれば分かっていただける」という反応もあった。
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