タイヤがなければクルマは走ることができない。わかっちゃいるけど、日々タイヤをチェックしたりケアしたりしている人はごく少数派だろう。
タイヤひとつでハンドリングや乗り心地も激変する。難しいのは、タイヤは一気に劣化するわけではないから、劣化に気付きにくい。
さらに、タイヤは4本セットで交換するとなるとそれなりの出費となる。できることなら交換サイクルを長くして、長期間使いたいと考えるのも当然だが、タイヤは安全に直結するパーツでもあるので、寿命の見極めは重要だ。
見た目だけで寿命のわからないタイヤの寿命、トラブルに関する噂についてタイヤのスペシャリストの斎藤聡氏がウソとホントを明らかにしていく。
タイヤに関する知識を蓄えて、安心・安全のカーライフを送ろう!
文:斎藤聡/写真:ベストカー編集部
タイヤはちょっとした油断が重大事故を誘発することもある
普段当たり前のように使っているタイヤだが、気がつくと摩耗が進んでいたり、パンクしてしまったり、思いもよらないタイミングでトラブルに見舞われることがある。
クルマの保有年数が増えれば、当然タイヤの磨耗は進み、タイヤを交換する機会も増えてくる。タイヤと長く付き合うほどに、新品の時には考えもしなかったタイヤのトラブルに遭遇するケースも多くなる。

このくらい大丈夫だろう、などと軽く見ているとそれが存外深刻なトラブルだったり、トラブルにつながる予兆だったなんてことも。
そんなわけで、ここではタイヤの寿命などにまつわるトラブルを5つ拾い出して解説してみよう。
タイヤの溝は法律で決められた1.6mm残っていればOK←ウソ
法律では溝は1.6mm残っていればよく、いわゆるスリップサインが出るまで使用可、ということになっているが、タイヤメーカーに話を聞くと残り溝3mmくらいが交換の目安だということだ。

溝が少なくなって危険なのが雨の日に起こりやすいハイドロプレーニング。タイヤの溝が浅くなると排水性が悪くなって排水しきれなかった水がタイヤの前に押し出され、タイヤが水の上に乗ってしまうのだ。
溝が浅くなるほどハイドロプレーニングは起きやすくなる。タイヤメーカーのテストでも5分山くらいからハイドロプレーニングの性能が急激に悪化していくのだという。
ちなみにサマータイヤのタイヤの溝は7〜8mmほどなので、4分山あたりが交換の目安になる。
オールシーズンタイヤはスタッドレスタイヤ通行可のチェーン規制を走れない←ウソ
山に雪の結晶のマーク=スノーフレークマークやM+Sの表記があることが前提だが、雪の高速道路や有料道路ではスタッドレスタイヤと同等の扱いとなる。だからスタッドレスタイヤ通行可のチェーン規制を走ることができる。
実はこれが今後の課題になると思われるのだが、スタッドレスタイヤと比べるとオールシーズンタイヤは明らかに雪の性能が劣る。氷の性能はさらに劣る。

しかし同じ道路を走れてしまうので、スタッドレスタイヤの走行ペースに引っ張られてオーバースピードになってしまうことも考えられるからだ。
夏場はサマータイヤとほぼ同じ感覚で走れ、雪が降ってもしのげるくらいの冬性能があるので、一年中履きっぱなしにできる便利なタイヤではあるのだが注意も必要なのだ。
タイヤにひび割れが入っていても車検は通る←ケースバイケース
実はタイヤの残り溝に関する法律的規制は前述のとおり1.6mmと明記されているのだが、ひび割れに関する表記はない。
ではすべて車検に通るのかというと、浅く軽微なひび割れから、ゴムが割れているのかと思えるような深く大きなひび割れまでまちまちなので、ひび割れの程度によって、検査官の判断で可否が決まる。
だから多少のひび割れがあっても車検は通るケースが多いということだ。

ただゴムのひび割れが激しいということは、ゴム自体がかなりダメージを受けており、タイヤに求められる柔軟性が著しく低下している可能性が高いので、走行中何かのきっかけで簡単にバーストすることだって考えられるので、セーフかもしれないが極めて危険。
スタッドレスタイヤは3シーズン使用可能←ケースバイケース
スタッドレスタイヤは、法律的には5分山までは冬用タイヤとして使っていいことになっています。これはスタッドレスタイヤ溝の部分に冬用タイヤとして認められるプラットフォーム(突起)があるので、これで確認することができる。
ただし、ゴムの経年変化による劣化は保管の仕方次第なので、3年は絶対に大丈夫とは言い切れない。風雨のしのげる日陰に保管していればまず大丈夫。
また保管する際は、タイヤを1本1本密閉するよりは、空気の出入りができたほうがよいのだという。
摩耗については、エッジや角が削れサイプが開いてしまうとスタッドレスタイヤとしての性能は大きく下がってしまうので、長く性能を維持したいなら丁寧な走り方も大切だ。
3年という年月よりも最優先すべきは残り溝ということになる。

サイドウオールが原因でパンクしたタイヤも再び使える←ウソ
タイヤの側面、サイドウオールをカットしてしまうなどしてパンクしてしまったタイヤはもう使えない。これは鉄則。サイドウオールはトレッド面と比べるとゴム層がとても薄く、強度的に補修が効かないのだ。
ゴム層の厚いトレッド面なら、パンク修理用のゴムを埋め込んだり、パンク修理材で穴をふさぎ修理することができるが、サイドウオールは不可。
たいていの場合、サイドウオールをカットすると急激なエア抜け≒バーストして一瞬で走れなくなってしまう。
サイド補強型のランフラットタイヤならそのまま80km/hで80km走り続けることができるがシールタイヤと呼ばれるトレッド面の裏にノリを貼ったタイプのノーパンクタイヤも走行できなくなってしまう。
