【ガラパゴスCVTの憂鬱】なぜCVTはATに代えられないのか?

CVTは今後どうなる?

チェーン式を採用するスバルのリニアトロニック。一部車種にはアクセルを踏み込まない「低開度」時は、滑らかな無段階変速。ドライバーがぐっと踏み込みアクセルが「高開度」になると、自動的にステップ変速に切り替わり、エンジン回転がぐっと伸びてリニアな加速が味わえるオートステップ変速切り替えモードを用意。また300ps/40.8kgmのWRX S4やレヴォーグの2Lターボにも耐えうる設計。WRX S4は2021年~2022年頃のデビューを予定しているが、多段ATを採用していくことになるのだろうか
チェーン式を採用するスバルのリニアトロニック。一部車種にはアクセルを踏み込まない「低開度」時は、滑らかな無段階変速。ドライバーがぐっと踏み込みアクセルが「高開度」になると、自動的にステップ変速に切り替わり、エンジン回転がぐっと伸びてリニアな加速が味わえるオートステップ変速切り替えモードを用意。また300ps/40.8kgmのWRX S4やレヴォーグの2Lターボにも耐えうる設計。WRX S4は2021年~2022年頃のデビューを予定しているが、多段ATを採用していくことになるのだろうか

 CVTの今後について予測してみよう。エンジン車はハイブリッドが一般的になったら、クルマを後退させたい時にはモーターを使うようにすれば、リバース用の逆転ギアはいらなくなる。

 発進時もモーターのトルクを使うことでCVTの減速比幅を抑えることができるから、CVTの効率はますます高められそうだ。

 とはいえ、多段ATもDCTもハイブリッドにより、さらにパワーユニットとしての効率が高められるのはいうまでもないことだし、トヨタはTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)の特許を無償公開したことで、この遊星ギアを活用した電気式CVTが世界中の自動車メーカーで採用して今以上に普及する可能性が高まっている。

 そう考えると、やはりエレメント式CVTの将来は多難というしかない。チェーン式CVTは、チェーンのピンとプーリーが接触する時の打音が静粛性を低下させるため横置きエンジンには不向きだ。

 軽自動車はマイルドハイブリッドであれば、CVTとの組み合せもしばらくは残りそうではあるが、ハイブリッド化によりCVTからATに代わられる車種も増えるだろう。

 特にスバルは、CVTから多段化ATへの変更を望むユーザーの声が多い。現在スバルは、ダウンサイジングターボ(2L→1.8L)へ進むなど、パワートレインの変更が行われている真っ只中にあるのでなんともいえないが、コストが嵩むため当面はチェーン式CVTを発展させていくことになるだろう。

 しかし、北米市場がメインマーケットという背景も考えると、長期的には多段化ATやTHS(すでに北米仕様にはあり)との組み合わせになっていくかもしれない。

いいCVT、悪いCVTの指標

 本企画で何度も出てきた言葉、レシオカバレッジ。最後にこのレシオカバレッジとはなにか、これまで聞いたことがなかった、という人のために、説明しておきたい。

 レシオカバレッジとは、変速機の変速比幅(適用可能な変速比の範囲)とも呼ばれ、最も低速のギア比を最も高速のギア比で割って求める値だ。

 この値が大きいほど、エンジンが低回転のままで走ることができる車速の幅が広いことになり、燃費が良く、静粛性に優れるという評価につながる。CVTの場合は、最も低速(ロー)のプーリー比を最も高速(ハイ)のプーリー比で割った数値になる。

  4速ATで4程度、6速ATで6程度、8速ATでは8程度、9速ATでは9.8、10速ATでは8.23となっている。CVTは一般に5.5~6程度。 巻末で各社の主な車種のレシオカバレッジを紹介しているので、いいトランスミッションの指標としてみてほしい。

 CVTの場合、変速用プーリーの大径化の制約があるため、多段ATよりも変速比の幅を広げられなかったが、日産とジャトコが2009年に実用化したCVTは副変速機をつけて、乗用車としては当時最も広いレシオカバレッジを7.3とし、後に8.7にまで広がった。

 いっぽう、トヨタは2018年12月、レクサスUX(RAV4)に採用したダイレクトシフトCVTは、CVTに発進用1速ギヤを組み込み、ベルトをハイ側に設定できたことで、レシオカバレッジ7.555を実現した。

 つまり副変速機と発進用1速ギヤを組み込むことで、発進、加速時にはギア比をロー側へシフトし、 力強い駆動力を得ることと、高速巡航時にはギア 比をハイ側へシフトし、静かで燃費の良い走りを両立させている。

 このレシオカバレッジの数値が大きいほど、いいAT、CVTなので、参考にしてほしい。ちなみに過去の車種の数値を比較してみると進化の幅がわかるだろう。

■主なCVT搭載車のレシオカバレッジ
●レクサスUX:7.555/CVT
●RAV4: 7.555/CVT
●ノート1.2L:7.284/CVT
●スイフト1.3L:7.284/CVT
●インプレッサスポーツ1.6L:7.031/CVT
●フォレスター2.5L:7.031/CVT
●セレナ2L:6.960/CVT
●エクリプスクロス1.5Lターボ:6.960/CVT
●エクストレイル2L:6.960/CVT
●シビックセダン:6.531/CVT
●ステップワゴン1.5Lターボ:6.531/CVT
●ヴォクシー2L:6.454/CVT
●WRX S4:6.442/CVT
●C-HR 1.2ターボ:6.263/CVT
●カローラスポーツ1.2Lターボ:6.263/CVT
●カローラセダン&ツーリング:6.263/CVT
●ヴェゼル1.5L:6.191/CVT

■軽自動車の主なCVT搭載車のレシオカバレッジ
●ekスペース G:7.285/CVT
●デイズルークスターボ:7.285/CVT
●ハスラーXターボ:7.284/CVT
●ワゴンRスティングレーハイブリッド:7.284/CVT
●アルトX:7.197/CVT
●アルトラパンX:7.197/CVT
●ワゴンRハイブリッド:7.197/CVT
●タントXターボ:6.619/CVT
●ekワゴン:5.968/CVT
●デイズ:5.968/CVT
●スペーシアハイブリッド:5.601/CVT
●スペーシアギアハイブリッド:5.601/CVT
●N-BOXターボ:5.463/CVT
●N-ONEプレミアムツアラー:5.463/CVT
●N-WGNターボ:5.463/CVT
●S660:5.463/CVT
●N-BOX G:5.460/CVT
●N-WGN G:5.460/CVT
●ウエイクX:5.298/CVT
●キャストアクティバ:5.298/CVT
●コペンエクスプレイ:5.298/CVT

■主なAT搭載車のレシオカバレッジ
●レクサスLC、LS:8.232/10速AT
●アルファード3.5:8.201/8速AT
●デリカD:5 2.3Lターボ:7.801/8速AT
●クラウン2Lターボ:6.709/8速AT
●レクサスRC F:6.709/8速AT
●スイフトRS-t:6.812/6速AT
●ロードスターS:6.079/6速AT
●スイフトスポーツ:6.018/6速AT
●デミオ1.5L XD:5.934/6速AT
●CX-5 XD:5.812/6速AT
●レクサスRX 2Lターボ:5.428/6速AT

■主な輸入車のAT搭載車のレシオカバレッジ
●フィアット500X:9.812/9速AT
●ジープチェロキー:9.812/9速AT
●ベンツCクラス:9.156/9速AT
●ベンツEクラス:8.908/9速AT
●BMW X2:8.201/8速AT
●BMW X3:7.812/8速AT
●アウディA4:7.377/7速AT
●プジョー3008:8.199/8速AT
●ボルボXC40:7.801/8速AT
●ボルボV60:7.801/8速AT

■主な過去の車種のレシオカバレッジ(順不同)
●LFA(2010年):4.064/6速AT
●NSXタイプT(2004年):3.360/4速AT
●BP5 レガシィツーリングワゴン2.0GT(2003年):4.425/5速AT
●アルテッツァAS200(1998年):3.356/4速AT
●カローラII 1.4L(1997年):2.810/3速AT
●マークIIグランデ(1995年):3.820/4速AT
●レパードJフェリー(1993年):4.013/4速AT
●S13シルビアK’S(1992年):4.013/4速AT
●EF7 CR-X Si(1990年):3.468/4速AT
●マーチターボ(1990年):2.286/3速AT
●R32スカイラインGTS25(1989年):5.558/5速AT

【画像ギャラリー】CVTとATの長所と短所、最新CVT搭載車の詳細

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