本誌『ベストカー』にて、クルマにまつわる変わったもの、見慣れないものを取材する連載企画『これは珍なり(略して『これ珍』)』。数ある企画の中から、2013年の「アルファードベースの霊柩車」にまつわる話題をご紹介!(本稿は「ベストカー」2013年11月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:ベストカー編集部
■これが超高齢化社会の近未来型霊柩車! ストレッチミニバンの“おくりぐるま”

超高齢化社会の現在、誰しも「終活」(人生の終わりのための活動)を一度は考えねばならないもの。
で、自分が将来息を引き取った際、葬祭式場から火葬場に移動するのに必ず乗らなければならないのが(遺体としてだが)霊柩車だ。
今回はこの霊柩車のなかでもユニークなタイプのものを製造している会社を紹介しよう。それが下の写真にも出ている近未来型霊柩車「みちびき」シリーズ、アルファードEMU(エミュー)を販売している有限会社TRG(本社・福岡県大野城市)だ。葬祭関連業者以外はほとんど目にしたこともないのではなかろうか。
それにしてもベースとなったアルファードを思いっきりストレッチしたその姿はインパクト絶大……。
それもそのはず、このアルファードEMU、全長は6160mmとベースのアルファード(全長4885mm)から1275mmも延長されているのだ。
もとの乗車定員は7~8名だが、霊柩車であるため2100mm棺にも対応する棺台レールを備えており、乗車定員は5名までとなる。
ちなみに現在、霊柩車には「宮型」「洋型」「バス型」「バン型」という4つの様式があるのだが、TRGでは洋型霊柩車を数多く手がけている。
宗教的装飾を施した棺室を設置した宮型霊柩車は、そのほとんどが新車で2000万円以上もする高額車であり、その出で立ちが目立ちすぎることに加え、宗教や思想の多様化によって宮型霊柩車が使われないケースも増えていることから、架装が比較的容易な洋型霊柩車の需要が最近では増えているそうだ。
ちなみに、昭和天皇の「大喪の礼」の際にも洋型霊柩車が使用されていた。
ところで、なぜアルファードをベースに霊柩車を作ったのだろうか。そのあたりをTRG販売企画室の植木氏に伺うと、
「もともと当社は1965年からガレージタルガという社名でオープンカーやガルウイング車の製作をしていましたが、その技術を活かし1990年頃から洋型霊柩車の製作を開始し、2001年から分社してTRGとなり正式に霊柩車のデザインや販売などを手がけるようになったんです。
ベース車の人気が非常に高いアルファードEMUは2011年4月から販売開始していますが、おかげさまでご好評をいただいてます」
TRGの手がける霊柩車のこだわっている部分は、
「製作コンセプトである『ひかりといのち』です。ひかりは仏の慈悲、いのちは万物を育てる太陽を意味します。高輝度の最新LED照明とのコラボに彩られた棺室内はご遺族様と参列者の方々に深い感動を与えます」(前出・植木氏)
目を引くのは外観だけでなく、ブルーに浮かび上がる室内のLED照明の部分だが、要望次第で企業ロゴやイメージなどをデザイン化することも可能なのだという。
さらに「思いやり」を体現するため、車いす付きリフトアップシート(4名乗り)を搭載可能で、身体の不自由な人や高齢者にも優しい本格的な豪華リムジン仕様となっているのも見逃せないポイントだ。
最後に気になる価格について聞いてみたのだが、基本的に葬祭業者向けの価格設定となるため、一般への公表はしていないのだそう。
ただし、新車で2000万円近い宮型霊柩車より安く1100万~1200万円ほどで購入できるとのことだ。
クルマ好きなら人生の最後は、こんなクルマでお迎えされてみたい!?
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