日本でよくても海外ではダメなケースも
お国が違えば食文化も変わるというが、車名を取り巻く環境も大きく違う。本国だけでなくすべての国・地域を満足させるのは難しい。これは日本、海外共通だ。
有名なところでは、2019年に長い歴史に終止符を打った三菱パジェロだ。北米や欧州ではパジェロではなくモンテロという車名で販売されているのだが、イギリスとスペインではショーグンという車名となる。
パジェロという車名でグローバル販売できなかったのは、パジェロという言葉がスペインでは卑猥な言葉として使われているからと言われている。
同様にトヨタセリカXXは北米ではスープラの車名で販売されていたが、当時アメリカでは成人映画などのX指定(現在のR指定に近い)があり、XXの車名がそれを連想させるということでスープラの車名で販売された。2代目からは日本でもスープラで統一。
輸出していないが、ダイハツネイキッド(全裸)、スズキハスラー(成人雑誌を連想させる)、ホンダThat’s(あれは!)などもアメリカ人に失笑される車名だ。まぁ、これは外国人が字面が気に入って『大馬鹿者』などの日本人では恥ずかしくて着られないTシャツを着ていたりするのと同じだろう。
商標だけではない語感の壁もある
そのほかの要因としては、商標の問題がある。原則的に他が登録しているものは使言えないか、使うならそれ相応の対価が必要になってくる。
日本マーケットに導入される輸入車でも、古いところではヒュンダイエクセルがヒュンダイXL、ルノークリオがルノールーテシアとして販売せざるを得なかったのは日本での商標に阻まれたから。
商標だけでなく、語感、響きが似ているという理由で車名が使言えないケースがある。車名ではないが、レクサスは1989年の立ち上げ時にアメリカの企業から響きが似ているということで使用禁止を求められた(後に解決)。
ヒュンダイのコンパクトカーのゲッツは日本ではTBという車名で販売されたが、これはヴィッツと響きが似ているからヒュンダイが断念したといわれている。
日本と海外で車名が違うことのメリットはあるのか?
日本メーカーにとっては、日本のユーザーが喜んでくれるというのが最大のメリットだが、戦略上のメリットはほとんどないと思われる。
逆にここ20年くらいの間に、コロナ→プレミオ、カリーナ→アリオン、セドリック/グロリア→フーガ、ブルーバード→シルフィなどビッグネームや慣れ親しんだ車名が続々と消滅している。日本専用の車名でも変わることでデメリットは小さくない。
日本独自の車名の減少は、すなわち日本専売モデルが激減していることとも関係があると思われる。
今後日本車もグローバル化がさらに進行するが、続々と統一ネームとなるのか気になるところだが、日本専売の軽自動車は、外国人がどう思おうが、失笑しようが、自由なネーミングが続くだろうし、それはやめないでもらいたい。
グローバルでの統一ネームと言えばマツダが推進していて、第7世代商品群に切り替わったのを機に、アクセラがマツダ3になり、アテンザはマツダ6、デミオはマツダ2に車名変更。マツダでグローバル車名に統一されていないのはロードスターのみとなった。
古くからマツダは海外モデルは数字3ケタの車名を使っていてアクセラの前身のファミリアは323、アクセラになってマツダ3という具合に、日本での車名とグローバルの車名を別々にしていたが、ここにきて一気に統一。
前述のとおり、日本は数字やアルファベットの車名を受け入れにくい土壌だから、マツダは大丈夫なのか、と心配する声が多いのだ。
車名が消滅したアクセラ、アテンザ、デミオとも認知度、語感ともすこぶるいいだけにレクサスのように浸透し、受け入れられるのかに注目したい。
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